Netflix『アドヴィタム』レビュー
『アドヴィタム』は、2025年1月10日よりNetflixで配信が開始されたフランス発のサスペンス・スリラー映画です。元エリート捜査官が妻の誘拐事件を追う中で、国家規模の陰謀に巻き込まれていく緊迫のストーリーが展開されます。
作品情報
- タイトル: アドヴィタム(原題: Ad Vitam)
- 配信開始日: 2025年1月10日(Netflix独占配信)
- 製作国: フランス、ベルギー合作
- ジャンル: サスペンス、スリラー
- 上映時間: 97分
- 監督: ロドルフ・ローガ
- 脚本: ギョーム・カネ、ロドルフ・ローガ、ダビッド・コロナ
- 音楽: アミン・ブアファ
キャスト紹介
フランク・ラザレフ(演: ギョーム・カネ)
主人公のフランクは、元特殊部隊員で現在は民間でセキュリティ関連の仕事に従事しています。ある事件で妻を失う寸前となり、その救出のために動き出します。フランクを演じたギョーム・カネは、フランスの名優として知られ、過去には映画『小さな泥棒』や『ミニミニ大作戦』などで世界的に高い評価を得ています。本作では、アクションシーンだけでなく、妻を救うために葛藤する繊細な感情も見事に演じています。
レオ(演: ジタ・アンロ)
フランクの妻であり、妊娠中のレオは、物語の核となるキャラクターです。武装集団による誘拐事件の中心人物で、フランクが彼女を救うために戦います。演じるジタ・アンロは、フランス国内で活躍する女優で、知的で気品のある役柄を得意としています。本作では、短い出番ながらも重要な存在感を発揮しています。
イヴァン・デュカス(演: ステファン・カイヤール)
フランクのかつての同僚であり、特殊部隊時代の戦友。フランクの頼れる相棒として再登場しますが、彼には隠された思惑がある可能性も。ステファン・カイヤールは、数々のフランス映画やドラマで印象的な演技を見せてきた俳優で、特にミステリアスなキャラクターを得意としています。
カリム(演: ナシム・リエス)
フランクの捜査をサポートするハッカーで、情報収集や分析で大きな役割を果たします。カリムの若さと才能がストーリーを進める鍵となります。ナシム・リエスは近年注目されている若手俳優で、本作での新鮮な演技が評価されています。
ジャン=クロード・マリネ(演: アレクシ・マナンティ)
誘拐事件の背後に潜む陰謀に関与している可能性がある政府関係者。ジャン=クロードは一見すると冷静な官僚ですが、その行動には謎が多く、物語を複雑にしています。アレクシ・マナンティは、舞台俳優としても経験豊富で、威厳のある演技が特徴です。
マルセル・シモン(演: ヨハン・ヘルデンベルグ)
フランクの元上官であり、今回の事件に関する重要な情報を握る人物。経験豊富なキャリア軍人として、フランクにアドバイスを与える一方、彼の言動にはどこか不穏な空気も漂います。ヨハン・ヘルデンベルグはベルギー出身の俳優で、国際的な作品にも出演しており、本作でもその存在感が際立っています。
あらすじ
元特殊部隊員の フランク・ラザレフ(ギョーム・カネ)は、かつての戦場での過酷な任務を終え、現在はセキュリティ関連の民間業務に携わりながら、穏やかな日常を取り戻そうとしていました。彼の支えとなっているのは、妊娠中の妻 レオ(ジタ・アンロ)との平穏な生活。しかし、突如としてその日常は破壊されます。
ある夜、フランクの自宅が何者かに襲撃され、レオは武装集団によって誘拐されてしまいます。 フランクはかろうじて命を取り留めるものの、愛する妻と未だ見ぬ子どもの命が脅かされている現実に直面します。犯人グループの狙いは何なのか。そして、なぜレオが標的になったのか――フランクには何一つ手がかりがありません。
唯一のヒントとなるのは、現場に残された謎の記号とフランクの過去に関するわずかな痕跡。やがて彼は、かつて特殊部隊時代に封じられたある極秘任務が今回の事件に関わっている可能性に気づきます。フランクは、昔の仲間である イヴァン・デュカス(ステファン・カイヤール)や若きハッカー カリム(ナシム・リエス)の協力を得て、事件の真相を追う決意を固めます。
調査を進めるうちに、事件の背後には国家規模の陰謀が隠されていることが明らかになります。鍵を握るのは政府高官 ジャン=クロード・マリネ(アレクシ・マナンティ)と、フランクの元上官である マルセル・シモン(ヨハン・ヘルデンベルグ)。彼らの冷徹な思惑と、過去の任務が絡み合い、フランクは次第に逃れられない巨大な渦へと飲み込まれていきます。
さらに、追跡の過程でフランクは、レオの誘拐が単なる復讐や金銭目的ではなく、未来の国家そのものを揺るがす壮大な計画の一部であることを知ります。愛する人を救うため、そして自身の過去の贖罪のために、フランクは危険を顧みず敵地へと潜入し、命を懸けた決断を迫られるのです。
果たしてフランクは、愛する妻と生まれ来る命を救うことができるのか。そして、その先に彼が見出す答えとは何なのか――。
『アドヴィタム』は、アクション、サスペンス、そして人間ドラマが見事に融合した映画であり、観る者に手に汗握る展開と深い余韻を残します。
私の感想
『アドヴィタム』の中で描かれるフランクの姿は、ただのアクションヒーローではなく、心の奥底に揺れ動く人間らしさに溢れていました。彼の物語は、表向きは愛する妻を救うためのスリリングな救出劇ですが、実際には彼自身が「過去の罪」と「未来の希望」の間で揺れる、葛藤の旅路だったように思います。
フランクはかつて特殊部隊員として国家のために尽くしてきましたが、その過去が今になって彼の家庭を壊そうとする皮肉な運命に対して、どこか無力感を抱えているように感じました。それでも、妊娠中の妻レオを取り戻すため、彼は再び武器を手にし、過去の自分と向き合わざるを得ません。その苦しみや恐怖が随所で表現されており、彼の選択の一つ一つが人間味に満ちていました。
特に印象的だったのは、フランクが敵との対峙を前に、自分の心に問いかけるシーンです。復讐心ではなく、「家族を守りたい」という純粋な動機が彼を動かしていることが伝わり、どんな困難にも立ち向かう父親としての姿勢に感動しました。同時に、彼が背負う「暴力の連鎖」から逃れられない現実も、物語の深みを加えています。
また、映画全体を通じて、フランクが「信頼」というテーマと向き合う場面が多く見られました。彼は過去の仲間や新たな協力者に助けを求める中で、信頼と裏切りの狭間に立たされます。そこに人間関係のもろさと複雑さが描かれ、ドラマ性を感じさせました。
アクションシーンも見応えがあり、緊迫感に満ちてました。しかし、私が最も心を動かされたのは、フランクの静かな瞬間です。特にラストシーンでは、彼が抱える痛みと希望が見事に交錯し、深く心に残りました。
『アドヴィタム』は、一人の男が自分自身と向き合い、家族への愛を貫く物語です。97分という短い時間の中で、アクション、サスペンス、ドラマのバランスが非常に巧みに取られており、緊迫感あふれる戦闘シーンや、ストーリーの随所に散りばめられた伏線が、映画に厚みを加えています。そして終盤に向けて一気に盛り上がる展開は、観る者に強烈なインパクトを残します。
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