映画『教皇選挙』感想・あらすじ|バチカン密室で交錯する信仰と権力のサスペンス

目次

映画『教皇選挙』レビュー

🎬 イントロダクション

バチカンのシスティーナ礼拝堂に密かに閉ざされた扉の向こう――そこでは外部との完全遮断下に100人以上の枢機卿による「コンクラーベ」が行われる。新ローマ教皇選びの舞台裏には、熾烈な政治的駆け引き、差別的思惑、スキャンダル、そして隠された秘密が渦巻く。本作はその禁断の内幕を、現代社会の縮図を映すミステリーとして描き出す。


作品情報

  • 監督:エドワード・ベルガー(『西部戦線異状なし』監督)
  • 原作:ロバート・ハリス(英語版『Conclave』・未邦訳)
  • 脚本:ピーター・ストローハン(『裏切りのサーカス』など)
  • 制作国・年/上映時間:アメリカ/イギリス合作、2024年制作、120分
  • 公開日/配給:2025年3月20日(日本全国)、配給:キノフィルムズ
  • 受賞・ノミネーション:第97回アカデミー賞で脚色賞を受賞(作品賞、主演男優、助演女優、美術など計8部門ノミネート)

キャスト紹介

  • ローレンス枢機卿(首席枢機卿):レイフ・ファインズ — シンドラーのリストやヴォルデモート役、M役などで知られる重厚な演技派
  • ベリーニ枢機卿:スタンリー・トゥッチ — 米国出身のリベラル派急先鋒
  • トランブレ枢機卿:ジョン・リスゴー — カナダの保守派、有力候補の一人
  • テデスコ枢機卿:セルジオ・カステリット — 伝統主義の保守派
  • アデイエミ枢機卿:ルシアン・ムサマティ — ナイジェリア教区から初のアフリカ系教皇候補
  • ベニテス枢機卿:カルロス・ディエス — 前教皇の密命によりインペクトレ任命された謎の枢機卿
  • シスター・アグネス:イザベラ・ロッセリーニ — 宿泊施設の責任者/枢機卿たちの良心的目撃者として存在感を放つ

🕍 あらすじ

バチカンに静寂が訪れる。
カトリック世界の頂点に立つローマ教皇が、突如として亡くなったのだ。

死後ただちに世界中の枢機卿たちがバチカンへと召集され、「コンクラーベ」と呼ばれる教皇選挙が開始される。選ばれし者だけが立ち入ることを許されたシスティーナ礼拝堂。その扉が内側から鍵をかけられた瞬間、世界最大の宗教組織の命運を左右する“密室の戦い”が幕を開ける。

この重大な儀式の運営を任されたのは、英国人枢機卿のローレンス(レイフ・ファインズ)。知性と信仰、そしてバチカン内部の権力構造に精通するローレンスは、自身は候補でないことを誓いながらも、次第にコンクラーベの闇に飲み込まれていく。

候補者として名が挙がるのは、思想・出自・過去もまったく異なる5人の枢機卿たち。

  • メディアからも注目されるリベラル派のベリーニ(スタンリー・トゥッチ)
  • 保守の牙城とされるトランブレ(ジョン・リスゴー)
  • 黙して語らぬ伝統主義のテデスコ
  • ナイジェリア出身で、アフリカ初の教皇を目指すアデイエミ
  • そして誰も予想しなかった、前教皇が“秘密裏に”任命していた謎の存在、ベニテス

彼らの中から新たな教皇が選ばれるはずだった――
だが、ローレンスのもとに届いたある封書が、すべてを覆していく。

「新教皇には、ある“秘密”がある」
「その秘密が明るみに出たとき、カトリック教会は崩壊するかもしれない」

ローレンスは信仰と理性、仲間との信頼と権力の板挟みになりながらも、真実に近づこうとする。だが同時に、誰が味方で誰が敵かもわからない状況に陥り、彼の信仰すらも試されていく。

そして、選挙の終盤。
最後の投票を前にして明かされる衝撃の事実。
それは、彼自身の運命すらも変えてしまう、あまりにも静かで、しかし激しい“啓示”だった。


この作品は、単なる宗教ドラマではなく、極限状態に閉じ込められた人間たちの心理戦・権力闘争のミステリー
そして、その深層には「信仰とは何か」「人を導く資格とは何か」が鋭く問われています。

✍️ 私の感想

この映画、『教皇選挙』は一見すると“宗教の話”“カトリックの内部政治”という硬派なテーマに思えるかもしれません。でも実際は、今を生きる私たちに直結する問題を、見事なサスペンスとして描いたエンタメ作品でした。

舞台はシスティーナ礼拝堂という密室。
教皇が急逝し、新たな教皇を選ぶために閉じ込められた枢機卿たちは、見た目には穏やかでも、内心では激しい権力闘争と心理戦を繰り広げていく。

その構図はまさに、政治、企業、SNS空間、あらゆる“組織”の縮図のようでした。

リベラル vs 保守。
伝統か革新か。
信仰か戦略か。
口には出さないけれど、各キャラクターが背負っているもの――出自、肌の色、国籍、ジェンダー観――が静かにぶつかり合う描写に、現代社会の緊張感が濃縮されていたように感じます。

そして、何より恐ろしかったのは、「選ばれる者」が“最も神に近い人間”ではなく、最も都合よく使える“駒”として見られてしまう危うさ。それは、どこかで私たちが見て見ぬふりをしている社会の現実そのものでした。

けれど、本作がただの批評で終わらないのは、そこにエンタメとしての完成度があるから。
どこか“クローズドサークル・ミステリー”のような感覚もあり、観ている側も「誰が教皇になるのか?」「ローレンスが抱える秘密とは?」と引き込まれていく。

中盤から終盤にかけての畳みかける展開は、まさに脚本の妙。
会話劇なのに、心臓がバクバクするような緊張感が持続するのは、役者の演技力と演出の巧さゆえだと思います。

ラストに明かされる真実には思わず息を呑みました。
それは、信仰・倫理・過去の清算・そして希望を巡る問いでもあり、今の時代に観るからこそ刺さるテーマだと強く感じました。


信仰という普遍的なテーマに、現代の“生きにくさ”や“声なき声”を重ね合わせた映画。
静かに、でも鋭く、観る者の心を試してくる一作でした。

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