Netflix『ザ・ディプロマット』シーズン1 レビュー
イントロダクション
米英関係の最前線=ロンドンを舞台に、臨時任命で英国駐在米国大使になったキャサリン“ケイト”・ワイラー(ケリー・ラッセル/ケリー・ラッセル)が、国際危機対応と“ほぼ破綻寸前”の夫婦関係の両輪を回しながら奔走する政治サスペンス。派手なスパイ・アクションよりも、“言葉”と“交渉”で火種を消すリアル寄りの手触りが特徴で、首相官邸・ホワイトハウスの力学、駆け引きの一語一句、そして夫ハル(ルーファス・シーウェル/ルーファス・スーウェル)の策士ぶりが見どころです。シーズン1は2023年4月20日に配信開始。以降シリーズ化され、作品公式は現在も継続中です。
作品情報
- 原題:The Diplomat(ザ・ディプロマット)
- 企画・製作総指揮:デボラ・カーン/Debora Cahn
- 配信:Netflix
- シーズン1話数:全8話(各41〜56分)
- 主な受賞・評価:主演ケリー・ラッセルがエミー賞ノミネート。視聴ランキングでも上位を記録。
キャスト(主要)
- ケイト・ワイラー:ケリー・ラッセル(Keri Russell)
- ハル・ワイラー:ルーファス・シーウェル(Rufus Sewell)
- オースティン・デニソン外相:デヴィッド・ジャイシー(David Gyasi)
- スチュアート・ヘイフォード(大使館首席):アトー・エッサンドー(Ato Essandoh)
- エイドラ・パーク(CIAロンドン):アリ・アン(Ali Ahn)
- アリス(ケイト付き):パール・マッキー(Pearl Mackie)
- ニコル・トローブリッジ英首相:ローリー・キニア(Rory Kinnear)
- 米大統領 ウィリアム・レイバーン:マイケル・マッキーン(Michael McKean)
ネタバレあらすじ(シーズン1)
英海軍空母が爆破され死者25名。犯人とされるロシアの傭兵ロマン・レンコフを巡って米英仏の思惑がぶつかる中、ケイトは“戦争回避”のため渡英早々から火消しに追われる。首席のスチュアート、CIAのエイドラと情報線を張り、英国外相デニソンと協調しつつ、好戦的なトローブリッジ首相の“強硬策”をいかに軟着陸させるかが鍵となる。夫ハルは“裏交渉の天才”として独自に動き、しばしばケイトの任務をかく乱。私情と国家利益が絡み合う中で、ケイトは“犯人逮捕”ではなく“危機の収束”をゴールと定め、レンコフの身柄確保に向けて各国を束ねていく。
※ここから最終話までの重要ネタバレ
最終局面、ケイトはレンコフ逮捕で一気に情勢を沈静化させるはずだったが、土壇場で“レンコフ暗殺”の計画が露見。しかも、その黒幕は英国首相トローブリッジ本人である可能性が浮上する。トローブリッジは国内政治のため“敵をでっち上げる”ような危険な一手を打っていた疑いが濃厚に。逮捕状に動くケイトとデニソン。一方その頃、ハルとスチュアートは英政界のキーマン、メリット・グローヴから決定的証言を得ようと接触するが、グローヴが乗り込んだ車が爆発。電話越しに爆音を聞いたケイトは、陰謀が想像以上に根深いことを悟る…という爆裂クリフハンガーで幕。
私の感想
まず、「ああ、こういうドラマが観たかったんだ」という感覚がすごくありました。The Diplomatシーズン1は、銃弾や爆破より、むしろ“言葉と空気の揺れ”が主役。例えば、使われる政治用語や外交儀礼、英国ロンドンという場所の空気感。これがただ背景じゃなくて、物語の“地盤”になっているのが良い。
特に、主人公のKate Wyler(ケイト)とその夫Hal Wylerの関係が、外交モードと“家庭モード”のギャップを浮かび上がらせてくれて、観ていて「あ、これ現場じゃこういうモヤモヤあるだろうな」と思わせるリアリティがありました。レビューでも「このドラマの豊かな部分は“ピーク過ぎた夫婦の肖像”」と書かれています。
ツボだったポイント
- ケイトが大使としての “顔” としてロンドンで振る舞う時と、ハルと対峙する私的な時間とのギャップ。人前で“僕たち夫婦”として振る舞いつつ、裏では情勢・キャリア・信頼が交錯していて、「仕事も結婚もどちらかだけじゃない」ことが日常的に感じられました。
- ハルというキャラクターが、決して“ただの悪役”じゃない。彼の動きはつねにケイトの仕事を揺さぶるけど、それは愛情とかプライドとか見えない駆け引きだったりして、観ていて「この人何を欲してるんだろう?」と気になる存在でした。
- 政治ドラマとしての“楽しさ”もちゃんとある。例えば、英米間の駆け引き、情報戦、表舞台には出ない“補佐役たち”の動き。レビューでも「演技・キャラクターが揃っていて、政治ドラマとしても楽しめる」って言われています。
気になったところ・引っかかったところ
ただ完璧、ではなくて「これはエンターテインメントだな」という割り切りも必要だなと思いました。
- プロットの展開がやや“ドラマ仕様”で、リアルではこういくか?というところもちらほら。レビューでも「リアルさを犠牲にしてスピード重視してる」っていう指摘があります。
- “夫婦モード”や“人間関係モード”の描写が濃くて、たまに外交・国家レベルの危機対応が背景になりすぎて主役同士のドラマに戻っちゃってると感じる瞬間が。つまり、「外交ドラマ」なのか「夫婦ドラマ」なのか、その境界が曖昧なところが好みを分けそう。
- 終盤のクリフハンガー(爆破シーンなど)は「おおっ」とはなるけど、「ちゃんと説明してよ!」というモヤモヤも。次シーズンへの期待を煽るけど、消化しきれない焦燥も残しました。
“観終わったあと”に残ったこと
観たあとに頭を離れなかったのは、「外交って、静かな戦いだ」という感覚です。音が大きければ誰でも気づくけど、静かに進む駆け引き・裏交渉・言葉の温度・信頼の揺らぎ、そういう“見えないレイヤー”がこのドラマにはたっぷりあって。
例えば、ケイトが記者会見の後に見せる疲れた顔とか、ハルが家庭では“夫”である前に“駒”として見られてしまう瞬間とか、そういう“余白”が効いてました。
そして、「仕事」と「人生」は分断できない、というのも深く刺さりました。ケイトは外交官として世界を回る。でも、家庭、夫、友人、信頼という“個人”の軸も持っていて、どちらも“責任”なんです。しかもどちらも手を抜けない。だからこそ選択が切羽詰まって見える。
もし私がこのドラマを誰かに勧めるなら、「政治ドラマ好き」「夫婦/人間関係もの好き」「少し知的に『見える』ドラマを観たい」人に特に勧めたいです。一方で「超リアルな外交手続き・制度を見たい」という期待で観ると、「え、こんな展開あり?」と感じる場面もあると思います。
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