『ラストマイル』ネタバレあらすじ・考察・感想|MIU404&アンナチュラルが交差する注目作

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映画『ラストマイル』レビュー

イントロダクション

映画『ラストマイル』は、TBSドラマ『アンナチュラル』と『MIU404』の世界線に接続するシェアード・ユニバース作品として、監督・塚原あゆ子、脚本・野木亜紀子の“最強タッグ”が仕掛けるノンストップ・サスペンス・エンタテインメントです 。

“ラストマイル”とは、物流で「最後の区間」、つまり消費者に商品を届ける最後の過程を意味し、本作ではそこに潜む恐怖と現代社会の脆弱性を描き出します 。


作品情報

  • 公開日:2024年8月23日
  • ジャンル:サスペンス・ミステリー
  • 上映時間:129分
  • 監督:塚原あゆ子
  • 脚本:野木亜紀子
  • 主題歌:米津玄師「がらくた」
  • 配給:東宝(制作プロダクション:TBSスパークル)
  • その他スタッフ:撮影・関毅、音楽・得田真裕、美術・YANG仁榮、編集・板部浩章ほか

キャスト紹介

  • 満島ひかり:舟渡 エレナ(物流センター長)
  • 岡田将生:梨本 孔(チームマネージャー)
  • ディーン・フジオカ:五十嵐 道元(統括本部長)
  • 阿部サダヲ:八木 竜平(運送会社「羊急便」関東局長)
  • 火野正平:佐野 昭(配達員)
  • 宇野祥平:佐野 亘(息子、見習い配達員)
  • 安藤玉恵:松本 里帆(シングルマザー)
  • 西武蔵野署&警視庁刑事:綾野剛(伊吹藍)、星野源(志摩一未)、麻生久美子(桔梗ゆづる)、大倉孝二(毛利忠治)、酒向芳(刈谷貴教)、橋本じゅん(陣馬耕平)、前田旺志郎、永岡卓也、丸山智己など
  • UDI法医チーム:石原さとみ(三澄ミコト)、井浦新(中堂系)、市川実日子(東海林夕子)、松重豊(神倉保夫)、窪田正孝(久部六郎)

ネタバレあらすじ

ブラックフライデー前夜。 世界的EC「DAILY FAST」から出荷された段ボールが次々と爆発し、西武蔵野ロジスティクスセンター発の荷物が“連続爆破”の震源だと判明。赴任早々のセンター長 舟渡エレナ(満島ひかり)とマネージャー 梨本孔(岡田将生)は、倉庫を止めずに犯人を突き止めるという無理難題に挑む。ここへ『MIU404』の伊吹・志摩、『アンナチュラル』のUDIラボも合流し、捜査と危機対応が同時進行で走り出す。


犯人は誰か——偽CM「DAILY FAUST」が割る“扉”

捜査の端緒は、公式には出稿していないはずの偽のWebCM「DAILY FAUST」。依頼名義は、5年前の落下事故で植物状態となった元センターマネージャー 山崎佑。エレナたちは倉庫を知る者で、物流代行(マーケットプレイス)を使って倉庫内で商品と爆弾をすり替える」ことが可能だと突き止め、アルバイト+代行利用者+該当商品の購入者という条件から犯人を絞る。真犯人は山崎の恋人・筧まりか。彼女はセンターに派遣で潜入し、ラストマイルを人質に取る形で社会に“痛覚”を求めたのだ。


ねじれた“最初の爆発”

犯人はセール2週間前に対象商品を把握して爆弾を仕掛けていた——なのに最初に爆発したのは未発売の新端末「デリフォン」。この矛盾をUDIが解体する。最初の遺体は被疑者想定の里中浩二ではなく、筧まりか本人。彼女は不具合で起動しなかった爆弾を、ガス火の部屋で作動させ“自死”していた。“最初の爆発”は犯人の自爆であり、連鎖を起動させた“号砲”でもあった。


ラスト1個——“配達済み”の爆弾

ほとんどの爆弾は回収されたが、最後の1個は既に配送済み配達員・佐野親子が現場の記憶と顧客との信頼を頼りに対応し、被害を最小化して連鎖はついに沈静化する。ラストマイルを担う現場の矜持が、事件の最後の歯止めとなる。


ロッカーの暗号「2.7 m/s →(70 kg)0」が示したもの

山崎が残した落書きは、ベルトコンベアの速度(2.7 m/s)と耐荷重(70 kg)、そして“稼働率0%”を暗示する丸二重の“0”。彼は自ら落下してラインを止めれば、非人間的な仕組みを一度“ゼロ”にできると錯覚した。だが現実は無慈悲に再稼働し、彼だけが取り残された——この“叫び”を受け取ったエレナは、配送会社との連携でストップをかける決断へと踏み込む。


事件の核心(要点)

  • 犯人筧まりか(山崎佑の恋人)。派遣として倉庫に潜入し、物流代行システムを悪用して商品と爆弾をすり替えた。
  • 引き金最初の爆発=筧の自死。UDIが身元を同定し“ねじれ”を解く。
  • 終幕配達済みの最後の爆弾佐野親子の機転で被害軽減、連鎖は収束。
  • テーマ:ラストマイルの疲弊と、**“便利の代償”**を社会全体に問い返す。

『ラストマイル』考察:労働・プラットフォーム論から読み解く

1. 「便利さ」を生む仕組みの影

映画が描く舞台は、誰もが日常で利用するECサイトの物流センター。
ここで働く人々は、秒単位の作業効率を求められ、自動化ラインと競争しながら働く。
まさにプラットフォーム資本主義の象徴で、個々の労働者は**「交換可能な部品」**として扱われている。

“ラストマイル”という言葉が示すのは、顧客の家の玄関まで荷物を届ける最終区間。しかし、映画はその裏で働く労働者の疲弊や孤立を可視化する。観客は「当たり前の便利さ」が誰かの汗と命を削ることで成立していることに直面する。


2. プラットフォームの“責任転嫁”構造

真犯人・筧まりかが爆破を仕掛けられたのは、物流代行システム(マーケットプレイス)の隙間だった。
プラットフォームは「場を提供しているだけ」と言い、個別のリスクは委託業者や派遣社員に押し付けられる
これは現実のUber EatsやAmazonのようなギグワークとも重なる構造で、**「都合の悪い責任は誰も取らない」**仕組みが事件の温床となった。

企業は「効率化」「顧客満足」を掲げる一方で、現場の声を切り捨てる。まさにプラットフォーム資本主義の冷酷さを、映画はサスペンスの形で突き付けてくる。


3. “人間をゼロにする”数値管理

山崎が残した暗号「2.7m/s →(70kg)0」は、ベルトコンベアの速度と耐荷重の数値
これは人間の作業を完全に数値化・標準化する仕組みを象徴している。
「人は何秒でどれだけ運べるか」「エラー率は何%か」。
労働者は人格を剥ぎ取られ、数字に還元された存在になっていく。

これはマルクス的にいえば「労働の疎外」そのものであり、プラットフォーム資本主義におけるアルゴリズム管理労働を先鋭的に描いたシーンといえる。


4. 最後の歯止めは「人」だった

映画のラストでは、最後の爆弾を止めたのは配達員・佐野親子だった。
膨大なデータやシステムではなく、現場で培った経験と人間的な勘が最後の命綱になったのだ。

これは皮肉でもある。
プラットフォーム資本主義が人を部品化しても、最終的に「ラストマイル」を担えるのは人間だという事実。
社会を回すのはシステムではなく、汗をかき、責任を引き受ける人の存在であることを強く訴えている。


5. 映画が突き付ける問い

『ラストマイル』は単なる爆破サスペンスではなく、**「便利さの代償を誰が支払うのか?」**という問いを観客に投げかけている。

  • 労働者はプラットフォームの匿名性に埋没し、声を上げられない
  • プラットフォーム企業は「場を提供するだけ」と責任を回避する
  • 顧客は「安さと速さ」を当然と思い、その裏を見ない

爆破という極端な形でしか訴えられなかった筧まりかの行動は、社会の構造的な歪みを象徴していた。
そして観客は、便利さの裏にある労働の現実を想起し、**「自分も加担者ではないか」**と自問せざるを得なくなる。


まとめ(労働・プラットフォーム論視点)

『ラストマイル』は、物流という題材を使いながら、実は現代のプラットフォーム資本主義と労働問題を描いた社会派映画である。
人間を数字に変換し、責任を曖昧にし、便利さだけを追い求める社会。
その歪みの果てに爆発が起きたという構図は、決してフィクションではなく、私たちが生きる現実そのものだ。

この両輪を同時に走らせることで、観客に強烈な体験を与える映画でした。

観終わった後に残るのは、「スリルを楽しんだ満足感」と「便利さの裏を考えさせられるざらつき」。
まさに、エンタメと社会批評の融合体と呼べる作品です。

私の感想

本当は映画館で観たかったんですが、タイミングを逃してしまって…。
ちょっと心残りだったんですけど、先日 からAmazonプライムで無料配信開始されてたので、鑑賞しました。

いや〜、やっぱり映画館で観たらもっと迫力あったんだろうなあって思うくらい、冒頭からの爆発シーンはドキッとするし、緊張感がすごいんです。
ただ、配信で落ち着いて観られた分、ストーリーの細かい部分もしっかり追えて良かったなって感じました。

特に面白かったのは、『MIU404』や『アンナチュラル』のキャラが出てくるクロスオーバー感
「あっ、この人出てくるんだ!」っていうサプライズがあって、ドラマ好きとしてはテンション上がりました。

ストーリー自体もただの爆破事件じゃなくて、便利さの裏にある労働の現実や、誰かが抱える苦しみが描かれていて、観ながら「うわ、これって今の社会そのものだな…」って考えさせられるところも多かったです。

ラストのシーンは、思わず息を呑みました。
「間に合え!」って気持ちで見守って、ちゃんと収束した時は自分もホッとしましたね。
スリルも社会性も両方あって、観終わったあともしばらく余韻が残る一本でした。

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