映画『ゆきてかへらぬ 』レビュー
映画『ゆきてかへらぬ』は、2025年2月21日に公開された日本映画で、実在した女優・長谷川泰子、詩人・中原中也、文芸評論家・小林秀雄という三人の複雑な関係と青春を描いた作品です。
🎬 イントロダクション
本作は、大正時代の京都と東京を舞台に、まだ芽の出ない女優・長谷川泰子と、後に天才詩人と称される中原中也、そして中也の友人であり文芸評論家の小林秀雄との間に生まれる愛と葛藤を描いています。脚本は田中陽造が40年以上前に執筆したもので、根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取り、映画化されました。
🎥 作品情報
- タイトル:ゆきてかへらぬ
- 公開日:2025年2月21日
- 上映時間:128分
- 監督:根岸吉太郎
- 脚本:田中陽造
- 配給:キノフィルムズ
👥 キャスト紹介(紹介文付き・簡潔版)
- 長谷川泰子(演:広瀬すず)
自由奔放で情熱的な新進女優。繊細な心を隠しながら、愛と芸術の狭間でもがく主人公。広瀬すずが新境地の演技を披露。 - 中原中也(演:木戸大聖)
若くして天才と呼ばれた詩人。純粋で不安定、情熱の塊のような青年。木戸大聖が中也の激しさと弱さを体現。 - 小林秀雄(演:岡田将生)
冷静沈着な文芸評論家。中也の友人だが、泰子に惹かれていく理知的な男。岡田将生が知性と葛藤を深く表現。 - 富永太郎(演:田中俊介)
中也の芸術仲間。時に優しく、時に鋭い視線で3人を見つめる存在。 - 鷹野叔(演:トータス松本)
芸術の世界に生きる男。人生の酸いも甘いも知るベテラン的ポジション。 - 長谷川イシ(演:瀧内公美)
泰子の家族。彼女の内面や生き方に影響を与える存在。 - スター女優(演:草刈民代)
女優として一歩先を行く泰子の“理想”のような存在。美しさと威厳を持つ。 - 辰野教授(演:カトウシンスケ)
知識人として登場し、若者たちの言動に含みを持たせる重要人物。 - 中原孝子(演:藤間爽子)
中原中也の姉。弟を思いながら、遠くから見守る心優しいキャラ。 - 勤め人(演:柄本佑)
出番は少ないが印象に残る役どころ。柄本佑らしい存在感を発揮。
📖 あらすじ
舞台は、大正末期の京都。女優を目指す**長谷川泰子(広瀬すず)**は、舞台の世界で生きる夢を抱きながらも、まだ陽の目を見ることのない無名の存在だった。そんなある日、彼女は一人の青年詩人――**17歳の中原中也(木戸大聖)**と出会う。
**「詩で世界を変える」**という野心と繊細な魂を抱える中也に、泰子は激しく惹かれていく。二人は恋に落ち、同棲を始めるが、若さゆえの不安定さと情熱が、日常を徐々に侵食していく。
やがて舞台は東京へ。詩人としての自我をさらに強める中也のもとに、彼の親友であり、後に日本文学界の巨人と呼ばれる文芸評論家――小林秀雄(岡田将生)が現れる。小林は中也の才能を最も理解する存在であり、二人は深い芸術的な結びつきを持っていた。
しかし、その小林もまた泰子の存在に心を奪われていく。
**三人の間に芽生えるのは、友情でも、恋愛でも、単なる欲望でもない、名状しがたい感情の渦。**誰かを愛すれば、誰かを傷つける。自分の才能と他人の才能の狭間で、自我が崩れていく。
「愛とは何か」「表現とは何か」「自分らしく生きるとは何か」――その答えを求めて、三人は“帰ることのない青春”を走り抜けていく。
そしてラスト、ある“別れ”が訪れたとき、観る者の胸には静かな余韻と、どうしようもない切なさが残る。
✍️ 私の感想
観終わったあと、静かな余韻に包まれつつ、心の中では思わずこうつぶやいていました。
「いや、恋と芸術って、こんなにもめんどくさくて…愛おしいんかい!」
映画『ゆきてかへらぬ』は、一言で言えば“感情が生きてる”作品でした。
広瀬すずさん演じる長谷川泰子、自由で情熱的で、でもどこか不安定。
彼女の繊細な表情や言葉に、何度もハッとさせられました。
そして、そんな彼女と出会ってしまったのが、17歳の詩人・中原中也(木戸大聖)。
彼の繊細さと激しさのハイブリッドな性格に、「ああ…青春だな…」としみじみしながらも、「ちょっと落ち着こ?」と心で何度かツッコミたくなりました…笑
さらにそこへ、岡田将生さん演じる小林秀雄が登場。
この人、静かに現れて、感情をかき回していくのがうますぎる。
**「あなたが来たことで全部こじれてるんですけど!?」**と突っ込みつつも、
その存在が物語に奥行きを与えていて、やっぱり憎めない…。
三人の関係は、ただの三角関係じゃないんです。
**「才能への嫉妬」「理解されたいという渇望」「誰かと共に生きたいという衝動」**が、ものすごく生々しく描かれていて、胸に刺さりました。
映像も素晴らしかったです。大正時代のレトロな街並みや、着物の色彩、柔らかな光の使い方まで、まるで詩のような画面構成。
もう「これは映像美で殴ってくるタイプの映画だな」と思いました。
ラストには、ちょっと涙が出そうになりながらも、「人って、不器用だけど一生懸命なんだなぁ」としみじみ。
それぞれの“ゆきてかへらぬ時間”があって、誰にも戻れない場所がある。だからこそ、今をどう生きるかが大切なのかもしれません。
とはいえ、全編通して登場人物が全力で感情ぶつけ合ってるので、観終わったあとはちょっと疲れるかも…笑
でも、その疲れこそが、“いい映画観たなぁ…”っていう証拠だと思います。
恋愛映画が好きな人も、文芸好きな人も、人生ちょっと迷ってる人にも、ぜひ観てほしい。
観た後に、自分の中に小さな“答え”がひとつ見つかるかもしれません。
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