連続ドラマW 『フェンス』感想・あらすじ解説|沖縄を舞台に“真実”を追う傑作社会派ドラマ

出典:WOWOW連続ドラマW『フェンス』
目次

WOWOW『連続ドラマW フェンス』レビュー

🎬 イントロダクション

野木亜紀子(『アンナチュラル』『MIU404』など)がオリジナル脚本を担当した『連続ドラマW フェンス』は、2023年3月19日から4月16日までWOWOWで全5話放送された社会派クライムサスペンスです。沖縄を舞台に、米軍基地問題と性暴力事件を巡る女性二人の真実探求を描き、日本社会に鋭く問いかける作品です。


🎥 作品情報

  • 放送年:2023年
  • 話数:全5話
  • 脚本:野木亜紀子
  • 監督:松本佳奈(『昨日なに食べた?S2』『団地のふたり』など)
  • ジャンル:エンターテインメント・クライムサスペンス
  • 受賞:ギャラクシー賞2023年4月度月間賞を受賞
  • 取材規模:40日間・100人超に取材、沖縄出身キャスト50人以上起用
  • 主題歌:Awich「TSUBASA feat. Yomi Jah」

👤 キャスト紹介

  • 小松 綺絵(通称:キー)/演:松岡茉優
    東京在住の雑誌ライター。沖縄で起きた性的暴行事件の真相追及へ奔走する
  • 大嶺 桜/演:宮本エリアナ
    沖縄出身で米兵の父を持つブラックミックス女性。自身が「被害者」として訴えるも、その背景には深い事情が
  • 伊佐兼史/演:青木崇高
    沖縄県警の警察官。キーの過去のキャバクラ勤務時代の客でもあり、事件捜査にも関与する
  • その他キャスト:佐久本宝、志ぃさー、吉田妙子、新垣結衣(特別出演)、與那城奨(JO1)など、多彩な沖縄縁の出演者で構成

📖 あらすじ

舞台は沖縄。観光地としての華やかさの裏で、米軍基地と隣り合わせに暮らす人々の「リアル」が静かに、しかし確かに横たわっている。

東京で雑誌ライターとして働く小松綺絵(キー)は、ある日上司から沖縄で起きた米兵による女性暴行事件のルポを担当するよう命じられる。当初は渋々だったキーだったが、「女性目線のリアルな声を届けたい」という編集長の言葉に押され、現地へ飛ぶことに。

そこで出会ったのが、被害を訴える女性・大嶺桜。米兵の父と沖縄出身の母を持ち、自身も沖縄とアメリカの狭間で揺れる“ミックス”として生きてきた桜は、どこか心に影を抱えていた。キーは観光客を装って桜に近づき、事件の真相に迫ろうとするが、やがて彼女の語る「被害の内容」が一致しないことに気づく。

本当に起きたことは何なのか?桜の語る“真実”は嘘なのか、それとも——。

その取材の最中、キーは偶然にも沖縄県警の刑事・伊佐兼史と再会する。彼はかつてキーがキャバクラで働いていた頃の“元客”でもあった。二人の再会がもたらす緊張感の中、物語はさらなる深みへと進んでいく。

調査が進むにつれ浮かび上がるのは、単なる事件ではない。**基地による町の分断、日米地位協定による法の壁、そして沖縄が長年背負ってきた「見えないフェンス」**の存在。暴力の加害者と被害者の境界がにじみ、過去と現在が交錯する。

やがてキーと桜、二人の女性の視線は交わり、共に“本当の加害者”に立ち向かっていく。
彼女たちの行動は、やがて沖縄という土地が抱える深い闇を世に知らしめていくことに——。


💡 読後の一言

ただの“犯罪ドラマ”じゃない。
ただの“社会派”でもない。

このドラマは、「知っているつもり」だった沖縄と、「わかった気でいた」日本の姿に、鋭く切り込んできます。
人の痛みがじんわり沁みてくる。
ラストまで目が離せない、一気見必至の5話です。

📝 私の感想

『フェンス』は、観る前と観た後で、自分の中の“当たり前”が少し変わるような、そんな作品でした。
沖縄を舞台にしたドラマはこれまでもありましたが、ここまでリアルで、しかも“他人事ではない”と感じられた作品は初めてかもしれません。

松岡茉優さん演じるライター・綺絵の言葉「この世界が間違ってるから、正しいことができない」は、まさにこの作品の核心を突いています。
正義を貫こうとする人が苦しみ、理不尽がまかり通る。
それを“構造の問題”として描ききった脚本の野木亜紀子さんには、本当に脱帽です。

被害を訴える桜を演じた宮本エリアナさんも、演技未経験とは思えないほど説得力がありました。
複雑なルーツを持ち、社会から無意識に線引きされてきた彼女の姿に、私自身も心を動かされました。

このドラマは、単なる事件モノやサスペンスではなく、“沖縄という場所に根付いた、現代日本の縮図”ともいえるような作品です。
米軍基地、性暴力、地位協定、貧困、差別…。
どの要素もリアルで、そしてそのどれもが「自分には関係ない話ではない」と思わせてくれます。

物語としての引力も強く、5話という短さを感じさせない濃密さ。
最終話に向けての展開は息を呑むほどで、ラストまで一気に引き込まれました。

“社会派”という言葉だけでは収まりきらない、感情と知性の両方に響く作品です。
ぜひ多くの方に観ていただきたい、強くそう思える一作でした。

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