映画『罪と悪』ネタバレあらすじと感想|過去の罪と正義を問う重厚サスペンス

目次

映画『罪と悪』レビュー

イントロダクション

田舎町――静かで見慣れた風景の陰に、人々が忘れようとしている過去がひそんでいる。『罪と悪』は、幼馴染たちがかつて共有した「罪」が、年月を経て再び表面化することによって、正義とは何か、罪を背負うとはどういうことかを問いかけるノワール・ミステリーです。監督・脚本を務める齊藤勇起(さいとう ゆうき)の長編デビュー作であり、若き日の行動と大人になってからの選択がもたらす歪みや葛藤が、静謐な町の空気とともにじわじわと緊張をもって描かれます。

作品情報

  • タイトル:『罪と悪』(つみとあく)
  • 監督・脚本:齊藤勇起
  • 公開日:2024年2月2日 全国公開
  • 上映時間:115分
  • ジャンル:サスペンス・ミステリー

キャスト紹介

役名演者特徴・立場
春(はる)高良健吾幼馴染のひとり。建設会社の社長として地元で活動。過去の「罪」を抱えている。
晃(あきら)大東駿介警視庁捜査一課の刑事。幼い頃の事件をきっかけに故郷へ戻る。
朔(さく)石田卓也農業を継ぎながら弟の面倒を見る立場。過去の影響で心に重みを持って生きている。
清水村上淳大人になった人物として、物語の鍵を握る役どころ。
特別出演など佐藤浩市、椎名桔平 他

あらすじ※ネタバレあり

田舎町で起きた少年殺人事件。犠牲者は13歳の正樹。遺体は橋の下で発見され、町中が恐怖と疑念に包まれる。
疑われたのは、町の厄介者「おんさん」という孤独な老人。幼馴染の 春・晃・朔・直哉 の4人は、噂と恐怖に駆られて彼の家へと押しかける。
追い詰められた末、彼らは 「おんさんを殺し、家に火を放つ」 という取り返しのつかない行動に出てしまう。――「自分たちは正義のためにやった」そう思い込むしかなかった。

それから 22年後

晃(大東駿介)は刑事として働いていたが、父の死を機に故郷へ戻ってくる。再び会う春(高良健吾)は建設会社を営み、不良たちの面倒を見ながら町で力を持っていた。朔(石田卓也)は農業を継ぎ、弟の直哉は引きこもり状態のまま。4人の運命は、過去の罪によって強く縛られていた。

そんな中、再び 橋の下で少年の遺体が見つかる。
状況は22年前と酷似していた。警察官となった晃は事件の真相を追い始めるが、それは同時に自分たちの罪を掘り返すことを意味していた。

やがて明らかになるのは、本当に「おんさん」が正樹を殺したのか」という根本的な疑問。
4人が「悪」と信じて排除したおんさんは、もしかするとただの冤罪だったのではないか。あの時の「正義の行為」は、ただの集団ヒステリーによるリンチではなかったのか。

現在の事件もまた、かつての「罪」を模倣したもの なのか、それとも「まだ隠された真相」があるのか。
過去と現在が交錯する中で、幼馴染たちはそれぞれの立場で揺さぶられていく。

春は「町を守る」ために黙して罪を抱え続ける。
晃は「刑事」としての正義と「子供の頃の罪」の狭間で苦しむ。
朔は「家族」と「友情」の板挟みになり、弟・直哉の存在がさらに重くのしかかる。

やがて浮かび上がるのは、「真の加害者は誰だったのか」 という問い。
正樹を殺したのは誰か?
そして「おんさんを殺した罪」を背負い続ける彼らの未来は、どこへ向かうのか。


臨場感ポイント

この映画の恐ろしさは、犯人探しだけでなく、
「自分が信じてきた正義は、本当に正しかったのか?」という問いが、視聴者自身に突きつけられることです。

ラストに至っても、事件の全貌は白日のもとには出ない。
ただ、「過去は消せない」「罪は生き続ける」 という重さだけが残る。
観終わったあと、心の奥にざらついたものが沈殿する、そんな作品です。

私の感想

『罪と悪』を観終わってまず感じたのは、**「あぁ、これは答えが出ない映画だな」**ってことでした。
普通のサスペンスなら「真犯人は誰なのか!」とか「正義が勝つ!」ってスッキリ感で終わるんですけど、この映画は逆。観れば観るほど、登場人物も視聴者も「自分は本当に正しい選択をしてきたのか?」っていう問いに引きずり込まれるんです。

22年前の少年殺人事件、彼らが「おんさん」を殺したシーン。子供の正義感とか恐怖とか、その場の空気で動いてしまった行為なんですよね。冷静に見れば完全に犯罪なんだけど、あの年齢では「俺たちは正義を貫いた」って思い込むしかない。ここがまず苦しい。
そして大人になった彼らは、それぞれのやり方で罪を抱え込んでる。春は町を守る顔をして影の仕事をしてるし、晃は刑事として正義を追ってるけど心の底に罪悪感がこびりついてる。朔は弟を守るために閉じこもるしかなくて、みんな形は違うけど過去に縛られてる。

特に印象的だったのは、**「おんさんは本当に犯人だったのか?」**っていう疑念が出てくる瞬間。ここで心臓をわしづかみにされました。
子供の頃に信じた「悪」を否定されたら、自分たちの行為は一体何だったのか。ヒーローだったはずが、一瞬で「加害者」に変わるんですよね。この構造がめちゃくちゃエグい。

映像のトーンも良かったです。田舎町の静けさが逆に不気味で、セリフがなくても「重いもの」が流れてる感じ。特に橋の下のシーンは、過去と現在が重なって胸がざわつきました。

ただ、観終わった後に「スッキリ感」は一切ないです。むしろ、心に泥を投げ込まれて、その泥をずっとかき混ぜられてる感じ。
でもその不快感こそが、この映画の魅力だと思います。

正直、「罪」とか「悪」って、他人事じゃない。僕らだって子供の頃にいじめを見て見ぬふりしたとか、大人になってから目をそらした問題とか、そういう「小さな罪」を抱えてる。
この映画は、それを強烈に思い出させる。視聴者を突き放すんじゃなくて、「お前もこの町の住人なんだぞ」って引きずり込んでくる。


総評

『罪と悪』はエンタメとして楽しむ映画というより、自分の内側を抉られる体験型のサスペンスでした。
正義と悪の境界線なんて曖昧で、結局は「自分が信じたいもの」を選んでるだけじゃないか――そんな問いを残してくる。

観た後しばらく、胸の奥がずーんと重い。でもその重さこそが、この映画を観る意味なんだと思います。

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