Netflix『デス・バイ・ライトニング』レビュー
イントロダクション
今回は、Death by Lightning(邦題:『デス・バイ・ライトニング』)をご紹介します。こちらは Netflix にて配信されているリミテッド・シリーズで、実話をもとにした政治・歴史ドラマです。時代背景からキャスト・ストーリーまで、“えっ、こんな展開あったの?”と興味をそそられる要素が満載なので、ブログのレビュー記事としても注目度が高そうです。
以下、作品情報、キャスト紹介、あらすじ、そして私の感想という流れでまとめます。
作品情報
- タイトル:『デス・バイ・ライトニング』(原題:Death by Lightning)
- 配信/公開日:2025年11月6日(全4話のリミテッドシリーズ)
- 形式/話数:全4話のミニシリーズ(1シーズン)
- ジャンル:歴史ドラマ・伝記クライムサスペンス
- 原作/制作関係:原作に Destiny of the Republic: A Tale of Madness, Medicine and the Murder of a President(キャンディス・ミラード著) を用いており、クリエイターは Mike Makowsky。また、制作には David Benioff & D. B. Weiss が関わっています。
- あらすじ(公式):「アメリカ合衆国第20代大統領である James A. Garfield と、かつての彼の熱烈な支持者であり後に暗殺者となる Charles J. Guiteau――この“信奉から暴走へ”という実話をドラマ化した物語」。
- 主な配役:
- ジェームズ・A・ガーフィールド役:Michael Shannon
- チャールズ・J・ギトー役:Matthew Macfadyen
- その他、ベティ・ギルピン(ファーストレディ役)、ニック・オファーマン(副大統領役)なども出演。
キャスト紹介
・Michael Shannon(ジェームズ・A・ガーフィールド役)
アメリカ第20代大統領。貧しい出自から政界を駆け上がり、改革を志すもその任期中に暗殺されてしまう人物。
・Matthew Macfadyen(チャールズ・J・ギトー役)
かつてガーフィールドの熱狂的支持者だった男。恩賞を望むが得られず、やがて暴走して暗殺に至るという“崇拝から破滅へ”の流れを体現する。
・Betty Gilpin(ルクレティア・ガーフィールド役)
ガーフィールドの妻であり、第一婦人として夫を支える立場に立たされる女性。私的にも公的にも葛藤のあるポジション。
・Nick Offerman(チェスター・A・アーサー役)
副大統領としてガーフィールド政権に絡んでくる保守派の重鎮。登場シーンでは風格だけでなく、演技変化が注目されています。
・Shea Whigham(ロスコー・コンクリング役)
共和党内部の保守強硬派として、ガーフィールドの改革路線に対して立ちはだかる政治家。
あらすじ※ネタバレあり
背景と“交錯”
James A. Garfield(ガーフィールド)は南北戦争後のアメリカで、貧しい出自から大学教員・議員へと駆け上がった“改革志向の政治家”。一方、Charles J. Guiteau(ギトー)は、一見支援者だが内面では妄執に取り憑かれた男。ギトーはガーフィールドの選挙勝利を“自分の実力”と思い込み、報われないことへの不満を募らせていきます。
ガーフィールドが「猟官制(いわゆる官職据え置き・派閥の私物化)を終わらせる改革」を掲げ、暗い政界の慣習に風穴を開けようとする一方で、ギトーは“旧勢力”/“派閥の駆け引き”から取り残された疎外感を抱えており、この二人の軸が物語を引っ張ります。
暗殺の瞬間
1881年7月2日。ワシントンの駅(Baltimore and Potomac Railroad Station)で、ガーフィールドは長男らと夏休み先の大学視察に出かける準備をしていました。
ギトーはその場に現れ、銃(英国製の〈.442 British Bulldog〉リボルバー)を所持。ガーフィールドが待合室に入った瞬間、背後から銃を発射します。ガーフィールドは肩と背中を撃たれ、「なんだ?」と声をあげ倒れます。警官に阻まれながらもギトーは「私はやった。アーサーが大統領だ!」と叫び、即逮捕されます。
この瞬間、改革と旧体制の対立、個人の野望と怨恨が交錯し、“もし殺されなかったら”という歴史の分岐点が姿を現します。
闘病と医療の惨劇
ガーフィールドは即死しません。実は、銃弾は脊髄を直撃せず、腹部近くに残りました。しかし、当時の医療技術・衛生観念がままならず、朦朧とした状況の中で繰り返し傷口を探したり、汚れた手で探診を行ったり。これが原因で感染が拡大、体力が蝕まれていきます。
シリーズではこの“医療のミスが命取り”という構図も丁寧に描かれます。ガーフィールドの妻 Lucretia Garfield(ルクレティア)は近くで看病しつつ、“夫が死ななくても良かったのでは?”という問いに直面します。
裏切り・改革・遺産
ギトーの主張はこうです:「私はあなたの勝利に貢献した。だから報われるべきだ」しかしガーフィールドは賞罰や派閥の取り返しではなく、制度改革を志しており、ギトーを特別扱いしません。その“受け入れられない”という感覚が、ギトーを“殺人”へと駆り立てます。シリーズは、ギトーが自らを“救世主的存在”と信じ込み、自分の存在を正当化する行為として暗殺を選ぶ過程をじっくり見せます。
加えて、ガーフィールドの改革路線(特に公務員制度改革や人材登用の透明化)は、彼が倒された後、「そのまま消える制度改革」ではなく、次の大統領 Chester A. Arthur に引き継がれ、のちに制度として形をなしていくという“遺産”も提示されます。
結末・問いかけ
ガーフィールドは銃撃から約80日後、1881年9月19日に死去。ギトーは1882年に有罪判決を受け6月30日に絞首刑に処されます。
シリーズのラストでは、ルクレティアがギトーの牢獄を訪れ、「あなたの名前を歴史が覚えてくれると思う?…そうは思えない」と語るシーンがあります。改革者の命を奪った男。そして“もし彼が生き続けていたら”という問い。作品は直接答えを出さずに、観る者に考えさせる形で幕を下ろします。
また、暗殺の瞬間から医療の過誤、制度改革の種、個人の歪んだ野望までを寄せて“歴史の分岐点”というテーマが浮かび上がります。
私の感想
最初に一言――“あ、これはベニオフ&ワイス節の“風格”がある”。政治劇なのに“戦(いくさ)”の緊張感が常に流れてて、場面は議会・サロン・駅のホームなのに、肌感は『GoT』の作戦会議や暗闘シーン。脚本の間(ま)と、台詞の刺し合いがめちゃ心地いい。しかも音の置き方が上手くて、ラミン・ジャヴァディのスコアが“史劇×サスペンス”的な高揚をキュッと締める。
キャストの圧は期待以上。マシュー・マクファディンのギトーは“気の毒と危うさ”が同居してて、笑っていいのか身構えるべきか毎回ゆさぶられる。歴史的には“狂信の人”なんだけど、彼の目つきと声色が「承認欲求→被害妄想→救済の自称」をスルスルと連結していくのが怖い。ミカエル…じゃなくてマイケル・シャノンのガーフィールドは、静かな筋の通し方が超良い。理想を語る声に“重さ”があるから、派閥政治の濁流の中でも「この人についていきたい」と思わせる説得力が生まれてる。ニック・オファーマンやブラッドリー・ウィットフォード、シェイ・ウィガムも粒立ちしてて、“群像の呼吸”が揃ってる。
演出のトーンは“史実の重さを、現代のスリラー速度で”。4話構成でダレる所がほぼ無い。共和党大会のごった返し→就任後の人事抗争→駅ホームの最悪の瞬間→長い闘病……と、どの章にも“事件級の山”が置かれてるから、史劇でも“続き見よ”の推進力が強い。特に医療パートの描写は胸が詰まる。弾丸そのものより“当時の医療”が命を奪っていく逆説がきちんと描かれてて、単なる暗殺譚で終わらないのが良い。
テーマの刺さり方も今風。猟官制と改革、派閥と理想、そして“報われない自己物語が暴力に転化する瞬間”。「自分は貢献した。だから報酬を」と信じ込み、拒絶を世界の敵意に読み替えるギトーの回路は、SNS時代の“歪んだ承認経済”を連想させる。ここは批評家レビューでも“いま見直す意味”として評価されてたと思う。
一方で惜しい点も正直ある。全4話ゆえに、ルクレティア(ベティ・ギルピン)の心情やアーサー副大統領の内的変化は、あと5〜10分ずつ欲しかった。物語はきれいに閉じるけど、「改革の火がどう受け継がれたか」をもう一段“制度史”として見たかった欲は残る。とはいえ、その“余白”が視聴後の読書(原作『Destiny of the Republic』)や史実調べに自然と背中を押してくるのも事実。
総じて、ベニオフ&ワイス名入りだからこその“重厚×疾走”のバランスが効いていて、期待して見てよかった派。役者の“顔”で見せるショットが多いので、通勤前のながら視聴より、夜に腰を据えて2話→翌日に2話が最高。史実ベースのドラマが苦手でも、これは“心理スリラー×政争エンタメ”として刺さるはず。
ブログランキング
ポチッと応援して頂けたら嬉しいです
コメント