映画『首』概要
『首』は北野武監督が原作、監督、脚本、編集の全てを担当した、6年ぶりの新作で19作目の監督作品です。この映画は初期の代表作『ソナチネ』(1993)と同時期に構想されたもので、巨匠・黒澤明監督が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画がついに実現しました。映画は戦国時代の日本を舞台に、本能寺の変を中心とした壮大な物語が展開されます。
主なキャラクター/キャスト
- 羽柴秀吉/ビートたけし
- 織田信長の後継者の座を狙い、本能寺の変を策略する野心家。
- 明智光秀/西島秀俊
- 謀反を起こした荒木村重を匿い、忠誠を誓っていた信長の首を狙う反逆者。
- 織田信長/加瀬亮
- 狂気を帯びた天下人。自身の後継者を餌に、家臣たちに謀反人・村重の捜索を命じる。
- 難波茂助/中村獅童
- 元百姓。秀吉に憧れ、侍大将に成り上がる野望を抱き、戦いに身を投じる。
- 黒田官兵衛/浅野忠信
- 秀吉を天下人にするために知略を巡らす軍師。
- 羽柴秀長/大森南朋
- 秀吉の弟。官兵衛と共に秀吉を支える。
ストーリー
織田信長(加瀬亮)は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げながら天下統一を目指していましたが、その最中に家臣の荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こして姿を消します。信長は明智光秀(西島秀俊)や羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣を集め、自分の後継者の座を餌に村重の捜索を命じます。
「働き次第で俺の跡目を指名する。いいか、荒木一族全員の首を斬ってしまえ!ただし、村重だけは殺すな。俺の前に必ず連れてこい!」
秀吉は弟の羽柴秀長(大森南朋)や軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)とともに策を練り、千利休(岸部一徳)の配下で元忍者の芸人・曽呂利新左衛門(木村祐一)に村重の捜索を指示します。実は、秀吉は逃亡した村重を利用して信長と光秀を陥れ、密かに天下を狙っていたのです。新左衛門に捕えられた村重は光秀に引き渡されますが、光秀は村重を殺すことができず、城に匿います。
一方、秀吉に憧れる百姓の難波茂助(中村獅童)は村を飛び出し戦場へ向かいます。そこで新左衛門と出会い、二人は出世を目指して共に行動することになります。
村重の行方がわからずいらだつ信長は、村重の反乱の背後に徳川家康(小林薫)がいると考え、光秀に家康の暗殺を命じます。しかし、秀吉は家康の暗殺を阻止して信長と光秀を対立させようともくろみ、その命を受けた新左衛門と茂助が家康の暗殺を阻止します。家康を排除したい信長は、京都・本能寺に茶会と称して家康をおびき寄せる計画を光秀に漏らします。信長を討つ絶好の機会を得た光秀は、村重に問います。
「これは……天命だと思うか?」
信長への愛憎入り乱れた感情を抱きつつ、ついに信長の“首”を獲る決意を固めた光秀。一方、秀吉は家康を巻き込みながら天下取りのために奔走します。
武将たちの野望、芸人と百姓の野望、それぞれの野望が“本能寺”に向かって動き出します。果たして、この“首”の価値は如何に?
評価
評価 映画のレビューでは、多くの観客がそのユニークな演出とキャラクター描写に感動しています。特に、北野武監督の独特のユーモアと暴力描写が際立っており、「狂った演技と首の血管が忘れられない」や「奇跡のような作品」といった声が上がっています。
私の感想
北野武監督の映画『首』を観て、戦国時代を舞台にした作品ながら、その独特なユーモアとダークな雰囲気に引き込まれました。まるで戦国版『アウトレイジ』のような感覚を味わえる作品です。
まず、キャストの演技が際立っています。ビートたけしさんが演じる羽柴秀吉は、彼のキャリアを彷彿とさせるキャラクターで、非常に魅力的でした。たけしさんの秀吉は権謀術数に長けた男でありながら、どこかコミカルで人間味のある一面も見せています。この複雑なキャラクターをたけしが見事に演じ切っています。
西島秀俊さんが演じる明智光秀は、冷静で知略に富んだ人物。彼が秀吉と対立し、信長に反旗を翻す過程は、緊張感に満ち溢れていました。特に、光秀が抱える内面の葛藤が丁寧に描かれており、観客として彼の選択に引き込まれます。
加瀬亮さんが演じる織田信長は、狂気とカリスマ性を併せ持つキャラクターとして描かれています。彼の狂気じみた演技は圧巻で、信長の持つ恐ろしさを存分に感じさせます。
映画全体として、戦国時代の権力争いがまるでヤクザ映画のように描かれており、これはまさに『アウトレイジ』の戦国版と言えるでしょう。北野監督特有の暴力描写とユーモアが絶妙に融合しており、観ているうちに次第に引き込まれていきます。
また、遠藤憲一さん演じる荒木村重や中村獅童演じる難波茂助など、脇を固めるキャストたちも見事です。特に、中村獅童の茂助は百姓から侍大将に成り上がるキャラクターで、彼の野望と苦悩がリアルに描かれています。
映画の中で特に印象的だったのは、秀吉とその家臣たちのドタバタ劇です。大森南朋さんと浅野忠信さんとの掛け合いはまるでコントのようで、時に笑いを誘い、時に深い感動を与えます。
総じて、『首』は北野武監督らしいユニークな視点で描かれた戦国時代の物語です。笑いあり、感動ありの作品で、戦国時代に興味がある人も、そうでない人も楽しめる内容となっています。戦国時代の背景を持ちながら、現代の人間ドラマとしても楽しめるこの作品、ぜひ一度ご覧になってみてください。
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