Amazonプライムビデオ『エンジェルフライト THE MOVIE』感想ブログ|“国境を越える別れ”が、こんなに温かいなんて。
イントロダクション
「誰かが帰ってこない」って、日常のなかで一番心を削る出来事かもしれない。
しかもそれが“海外での死”となると、距離も言葉も制度も、全部が壁になる。
『エンジェルフライト THE MOVIE』は、その壁をひとつずつ越えて、亡くなった人を“家族のもとへ帰す”仕事――国際霊柩送還士たちの物語。
泣かせに来るだけの作品じゃなくて、遺族の気持ちも、現場の現実も、そして“残された側が前に進むための儀式”も、丁寧に積み上げてくるのが強い。
ドラマ版の延長としても楽しめるし、初見でも「人の最期」に向き合うヒューマンドラマとして刺さる一本です。
作品情報
- 作品名:エンジェルフライト THE MOVIE
- 配信:Amazon Prime Video(Amazon Original)
- 配信開始日:2026年2月13日
- 上映時間:138分
- 原作:佐々涼子『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(ノンフィクション)
- 脚本:古沢良太
- 監督:堀切園健太郎
- エンディングテーマ:青山テルマ「Heart」
キャスト紹介
エンジェルハース(国際霊柩送還チーム)
- 米倉涼子:伊沢那美
- 松本穂香:高木凛子
- 城田優:柊秀介
- 遠藤憲一:柏木史郎
- 矢本悠馬 / 野呂佳代 / 徳井優 ほか
物語の鍵を握る人物
- 向井理:足立幸人(那美の恋人/8年前に安否不明)
※このほか、映画で新たに登場する実力派キャストも多数。
あらすじ(ネタバレなし)
国際霊柩送還士・伊沢那美(米倉涼子)が率いる「エンジェルハース」は、海外で亡くなった人を“日本へ”、日本で亡くなった人を“母国へ”――国境を越えて送り届ける仕事をしている。
本作は、一本の映画の中で、まるで連ドラのように4つの送還案件(=4つの別れ)が同時進行していく構成。
それぞれの遺族が抱える事情はバラバラで、正解のない「最期の向き合い方」だけが共通している。
そしてもうひとつ。
那美には、8年前に消息を絶った恋人・足立幸人(向井理)がいる。
「彼は生きているかもしれない」――その情報が、送還の現場と交差しながら、那美の“強さ”の奥に眠っていた感情を揺らしていく。
4つの別れの物語と、那美自身の答え合わせが、一本の線として繋がっていく映画です。
あらすじ(ネタバレあり)※ここから先は結末に触れます
① メキシコ:30年前に“駆け落ち”した夫婦の物語(夫婦の痛みが重い)
日本を離れ、メキシコで生きてきた夫婦に突然の死が訪れる。
残された側に突き刺さるのは「夢」「生活」「家族との断絶」、そして“あの選択が正しかったのか”という後悔。
周囲の誤解や責めが膨らむ中で、那美たちは事実を積み上げながら、遺族がちゃんと別れを終えられる形へ運んでいく。
② 車椅子で世界一周:青年の“挑戦”と、残された人の視線
車椅子で世界一周に挑んだ青年が、ゴール直前で命を落とす。
称賛と感動の裏側で、当事者や周囲の人の心には、言葉にしづらい揺れもある。
「善意」「称賛」「見る側の視線」まで含めて、送り方を問うエピソード。
③ 突然死症候群で亡くなった赤ちゃん:言葉にならない喪失
理由が分からないまま奪われた命。
遺族の悲しみは説明できないし、整理もできない。
だからこそ送還士ができるのは、気休めじゃなく、手順と配慮で“時間”を作ること。この静けさが胸にくる。
④ 米国俳優:日本に“愛する人を残したまま”旅立った別れ
華やかな世界の住人の死――に見えて、残された人の痛みは同じ。
言えなかった言葉、間に合わなかった時間。
「別れは平等に残酷」という事実を突きつけつつ、最後は“残る側”に小さな区切りを渡していく。
米倉涼子(那美)×向井理(幸人)の物語:4つの案件が“那美の答え”を削り出していく
この映画が上手いのは、4つの案件が単なるオムニバスじゃなくて、全部が那美の心を少しずつ動かし、
「幸人は生きているのか/死んでいるのか」だけじゃなく、那美が過去とどう決着をつけるのかに焦点が絞られていくところ。
- 夫婦の別れは、「一緒に選んだ人生」の重みを突きつける
- 挑戦の死は、「生きた証」と「残す人の現実」を突きつける
- 赤ちゃんの死は、「理由のない喪失」を突きつける
- 俳優の死は、「言えなかった言葉」を突きつける
その全部が、那美の中の“蓋”を少しずつ開けていって、最後に幸人の存在が、那美にとって過去ではなく現在の問題として決着点に向かう。
公式でも「那美の恋人が生きているかも、という全体を描くラブストーリー」と語られていて、まさにこの構造が核になっています。
私の感想
国も背景も違う別れが次々に押し寄せてきて、感情が追いつく前に次の現場が来る。でも、それが逆にリアルでした。送還の仕事って、ドラマみたいな奇跡じゃなくて、段取りと時間との勝負でできてるから。
そして、この“密度の高い別れ”を一本の映画として成立させてる中心にいるのが、やっぱり米倉涼子さんなんですよね。
那美って、いわゆる「強い女」の象徴みたいな人じゃないですか。
現場ではブレない、折れない、感情に飲まれない。言葉も態度も、必要以上に優しくしない。
でもこの映画の米倉涼子さんは、その強さの中に、ちゃんと痛みの層が見える。ここがめちゃくちゃ良かった。
たぶん那美は、誰よりも“別れ”を知ってる。
だからこそ、遺族に寄り添いすぎない。寄り添いすぎたら、自分が壊れることも分かってる。
その「プロとしての線引き」があるのに、ある瞬間だけ、ふっと視線が揺れる。声が少しだけ詰まる。
その“ほんの一瞬”が刺さるんです。感情を爆発させないからこそ、逆に刺さる。
そんな中で、私が一番心を持っていかれたのが、木村祐一さんの夫婦の話。
派手な事件が起きるわけじゃないのに、派手じゃないからこそ、じわじわ入ってくるんですよね。
夫婦って、長く一緒にいるほど「言わなくても分かる」になっていく。
でも本当は、言わないと伝わらないことの方が多い。
「そのうち言おう」「落ち着いたら言おう」って後回しにしてるうちに、日常は当たり前に続いていくから。
なのに、別れは突然終わりにしてくる。
木村祐一さんのエピソードは、残された側の後悔を、派手な涙じゃなく、静かでしつこい痛みとして描いてくる感じがして…。
「なんであの時、ああ言わなかったんやろ」
「最後に、ちゃんと優しくできてたかな」
そういう問いが胸の中でずっと鳴る、あの感じ。観てて苦しいのに、目が離せなかった。
しかも、この作品はそこを“お涙頂戴”だけで処理しないんですよね。
遺体を帰すための手順、交渉、制度、現場の冷たさ――そういう現実もちゃんと映す。
感情だけに浸らせてくれない。でも、その冷たさがあるからこそ、最後に見える人の温度が沁みる。
そして、その温度を一番引き出してるのが、米倉涼子さんの那美。
那美は「泣いて慰める人」じゃない。
でも、泣かないまま“ちゃんと終わらせる”方向に現場を動かして、遺族にとっての区切りを作る。
その姿が、優しさの別の形に見えるんです。
「亡くなった人を帰す」って、ただ移動させることじゃない。
残された人の時間を少しだけ整理して、心の置き場所を作ること。
木村祐一さん夫婦の話を観て、その意味がすごく胸に落ちました。
そして那美の仕事ぶりを観て、“区切り”って誰かが作ってくれるからこそ、人は前に進めるんだなって思った。
観終わったあと、重い話だったはずなのに、意外と残ったのは暗さじゃなくて――
「今日、連絡しとこ」
「ありがとうって言っとこ」
っていう、日常を大事にしたくなる気持ちでした。
当たり前って、当たり前じゃない。
泣けるっていうより、心が静かに整っていく。そんな感動でした。
こんな人におすすめ
- 泣けるだけじゃなく、心が温まるヒューマンドラマが観たい
- “仕事”を通して人生を描く物語が好き(職業モノ好き)
- ドラマ版が好きで、那美の過去が気になっていた
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