『栄光のバックホーム』感想|阪神ファンがNetflixの前で声を殺して泣いた話

目次

この映画を観たきっかけ

横田慎太郎。背番号24。

阪神ファンなら、この名前を聞いただけで胸がざわつく人も多いと思う。2016年の開幕スタメンに名前があったとき、テレビの前で「この子、来たな」と声が出た。足が速くて、打球も力強くて、将来のクリーンナップを打つ男だと、本気で信じていた。

だからこそ、この映画はずっと気になっていた。劇場公開のとき、タイミングが合わなくて観に行けなかったのが心残りだった。そしたら4月にNetflixで配信が始まっているのを発見して、「今しかない」と再生ボタンを押した。

結論から言う。観てよかった。ただし、自宅だろうとティッシュ箱は手元に置いておいたほうがいい。

この記事では前半にネタバレなしの感想を、後半にネタバレありの深掘り感想を書いています。まだ観ていない方も安心して読んでください。

『栄光のバックホーム』作品情報

あらすじ

阪神タイガースにドラフト2位で入団した横田慎太郎。2016年の開幕戦で一軍スタメンの座をつかみ、プロ初ヒットを記録する。「未来の阪神を背負う男」と期待されたその矢先、脳腫瘍が見つかる。視力を失いかけながらも、彼はグラウンドに戻ることを諦めなかった——。

キャスト

横田慎太郎を演じるのは松谷鷹也。母・まなみ役に鈴木京香。脇を固めるのは前田拳太郎、伊原六花、古田新太、大森南朋、柄本明、高橋克典と、かなり豪華な顔ぶれ。

スタッフ

監督:秋山純 / 2025年製作

配信・視聴方法

2025年11月28日に劇場公開。2026年4月23日からNetflixで独占配信がスタートしているので、今すぐ自宅で観られます。

【ネタバレなし】『栄光のバックホーム』感想

松谷鷹也の演技が、もう横田慎太郎にしか見えない

まず言いたいのが、主演・松谷鷹也さんの存在感。正直、キャスティングが発表されたときは「誰?」と思った。でも映画が始まって数分で、完全に横田慎太郎がそこにいた。

打席での構え方、走塁のフォーム、そしてなによりあの笑顔。「ちゃんと野球をやってきた人の身体」をしている。これは大きい。野球映画で一番冷めるのって、「この人、バット振ったことないな」って感じる瞬間だから。

鈴木京香の「お母さん」が胸に刺さる

鈴木京香さん演じる母・まなみの存在が、この映画のもうひとつの軸になっている。息子の夢を応援しながら、病と向き合う母親の姿。派手な泣きの演技じゃなくて、ぐっとこらえる表情で語ってくる。

「あぁ、お母さんってこういう生き物だよな」と思った。たぶん子どもがいる人は、ここでやられると思う。

「泣かせにくる映画」ではない

ここが一番伝えたいところ。この映画、安っぽいお涙頂戴ではない。もちろん泣く。めちゃくちゃ泣く。でも「はい、ここで泣いてください」みたいな押しつけがましさがない。

淡々と、でも丁寧に、ひとりの青年の日々を追いかけていく。その「普通の日々」の積み重ねがあるからこそ、クライマックスで感情が決壊する。

個人的にグッときたのは、横田が黙々とリハビリに取り組むシーン。派手な見せ場じゃない。ただ、ボールを握って、投げて、うまくいかなくて、また握る。その繰り返し。「もう無理だろ」と画面の前で思ってしまった自分が恥ずかしくなるくらい、彼は諦めていなかった。50年生きてきて、何かにあそこまで食らいつけた経験が自分にはあるだろうか、と考えてしまった。

あと、鈴木京香さんがキッチンでひとり泣くシーン。あれはずるい。セリフがほぼないのに、あの背中だけで全部伝わってくる。「お母さん、息子の前では絶対に泣かないんだろうな」と思った瞬間に、こっちの涙腺が完全に壊れた。

野球を知らなくても大丈夫。でも知っていると倍泣ける

Filmarksのレビューを見ても「野球に全く興味がないけど号泣した」という声がかなり多い。人間ドラマとして、ちゃんと成立している。

ただ、阪神ファンとして言わせてもらうと、あの2016年の開幕戦を覚えている人間には、序盤から感情の負荷がとんでもない。「ああ、この先に何が待っているか知っている」という状態で観る幸福感と苦しさが同時に押し寄せてくる。

気になった点も正直に

完璧かと言われると、少しだけ気になる部分もある。中盤の闘病パートがやや駆け足に感じた。もう少し病室での日常を丁寧に描いてほしかったな、というのが本音。あと、チームメイトとのエピソードがもう少しあると、引退試合のシーンがさらに厚みを増したかもしれない。

ただ、これは「もっと観たかった」という贅沢な不満であって、映画の完成度が低いということではない。

こういう人に特に刺さる

  • 阪神ファン(これは言うまでもない)
  • 野球を頑張っている子どもがいる親御さん
  • 夢を追いかけた経験がある人
  • 「最近、泣いてないな」と思っている人

評価

★★★★★(4.5/5.0)

ひとことで言うなら「静かに、でも確実に心を持っていかれる映画」。派手さはないけれど、観た後にじわじわと効いてくる。観終わったあと、しばらくNetflixのエンドロールをぼーっと眺めてしまった。横田慎太郎という人間の生き様が、画面の向こう側から真っ直ぐ飛んでくる。まさにバックホームのように。★0.5だけ引いたのは、中盤もう少し観たかったという贅沢な理由だけ。ほぼ満点。


⚠ ここからネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。


【ネタバレあり】『栄光のバックホーム』深掘り感想

あの引退試合のシーンについて

2019年9月26日、鳴尾浜球場。ウエスタン・リーグ、対ソフトバンク戦。8回表、ツーアウト二塁。

映画の中でこのシーンが始まった瞬間、画面の前で背筋が伸びた。観ている人はみんな知っている。この先に何が起こるか、知っている。でも、それでも息を呑んだ。

打球がセンター前に飛ぶ。ほとんど視力を失った横田が、その打球をキャッチする。そしてホームへ——ノーバウンドのストライク送球。ランナーはタッチアウト。

「練習でもあんなボール投げれていなかった」という本人の言葉を知っているからこそ、このシーンの重みが何倍にもなる。映画では約570人のファンが見守る中でのこのプレーを、丁寧に、本当に丁寧に描いていた。

「栄光の架橋」が流れた瞬間

ここは完全に制作側の勝ち。ずるい。ずるいけど、ありがとうと言いたい。あのタイミングであの曲は、もう理性とかの問題じゃない。身体が勝手に泣く。

自宅のソファでひとりで観ていたのに、声が出そうになった。これは映画館で観ていたら確実に周りの人と「同志」になれていたと思う。

背番号24の重み

映画全編を通して、背番号24が象徴的に使われている。ユニフォームを着るシーン、脱ぐシーン、そしてもう着られなくなったユニフォームを見つめるシーン。

横田慎太郎は2023年7月、28歳でこの世を去った。映画のラスト、その事実が静かに示されるとき、自分の部屋なのに息をするのも忘れていた。

これ以上の詳細はぜひ自分の目で確かめてほしい。Netflixで配信中なので、できれば部屋を暗くして、ひとりで集中して観てほしい。

まとめ

『栄光のバックホーム』は、ひとりの野球選手の人生を通して「生きること」「夢を追うこと」の意味を問いかけてくる映画だった。映画館で観れなかったことを後悔していたけど、自宅で観たら観たで、人目を気にせず思いっきり泣けたのでこれはこれでよかったかもしれない。阪神ファンはもちろん、野球を知らない人にもぜひ観てほしい。泣いた後に残るのは、悲しさじゃなくて「明日もちゃんと生きよう」という気持ちだから。

Netflixで現在配信中。まだの人はぜひ。

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