イントロダクション
2024年公開の時代劇映画『碁盤斬り』は、白石和彌監督の初の時代劇作品です。主演は『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞を受賞した草彅剛が務め、壮絶な復讐劇が描かれます。本作は、古典落語『柳田格之進』を原作に、武士の誇りをかけた父と娘の物語を描いたリベンジ・エンターテインメントです。
キャスト詳細
- 柳田格之進役:草彅剛
冤罪をかけられ、妻を亡くした浪人。囲碁の達人であり、その誠実な生き方を貫く。 - お絹役:清原果耶
格之進の娘で、父との絆が物語の核となります。 - 柴田兵庫役:斎藤工
格之進の敵対者であり、彼の宿敵として登場します。 - 長兵衛役:市村正親
囲碁を通じて物語の鍵を握るキャラクターです。
あらすじ(ネタバレあり)
柳田格之進(草彅剛)は、冤罪を着せられ浪人となり、妻を失い、娘のお絹(清原果耶)とともに江戸で貧しい生活を送っています。格之進は囲碁の達人として知られ、その打ち筋には彼の誠実さと不屈の精神が表れています。しかし、彼の心の中には、妻の死と自分を陥れた者たちへの復讐心が静かに燃え続けていました。
物語の序盤、格之進は囲碁を通じて長兵衛(市村正親)という人物と出会います。彼は囲碁を仕切る影の存在で、物語の重要な鍵を握る人物です。格之進は彼を通じて、次第に自らの冤罪を仕掛けた黒幕に近づいていきます。
やがて、格之進は、自分が罪をかぶせられた事件と妻の死の真相を知ります。その真相には、柴田兵庫(斎藤工)が関与していました。兵庫は、格之進を破滅させた張本人であり、彼との最終的な対決が物語のクライマックスを迎えることとなります。
対決の舞台となるのは、囲碁の盤上と剣を交えた戦いの場です。格之進は囲碁の「石の下」という戦術を使い、兵庫に一見無謀に見える手を打ちます。この「石の下」は、囲碁の中でも特に高度な手筋で、相手に石を取らせた後に逆転するというものです。まさに格之進の復讐心と冷静な計画を象徴する手であり、彼は見事に兵庫を打ち負かします。
一方、娘のお絹との関係も物語のもう一つの軸です。父としての格之進の苦悩が描かれ、娘への深い愛情と彼女を守るための決意が、物語をより感動的なものにしています。最終的に、格之進は自らの復讐を成し遂げるものの、心の中には空虚感が残り、娘との新たな生活を模索する姿が描かれています。
評価と見どころ
『碁盤斬り』は、静かな復讐心を燃やす草彅剛の演技が高く評価されています。また、映画後半の対決シーンでは、白石監督らしいリアルな描写が観客を引き込みます。落語をベースにしつつも、映画ならではの追加エピソードが魅力となっており、観る者に深い感動を与えます。
感想
まず、全体的なトーンとして、静かな展開が作品全体に貫かれている点が印象的でした。映画は、暴力的なシーンや派手な演出が目立つ近年の作品とは一線を画し、緊張感をじわじわと高める手法を取り入れています。特に、格之進の心に秘めた復讐心が静かに燃え続ける様子は、台詞やアクションで派手に表現されるのではなく、抑制された演技と細やかな描写で描かれており、視聴者としてその重みを自然に感じ取ることができました。
また、正統派の時代劇としての雰囲気が、漂っていました。物語は、浪人となった格之進が娘を守りつつ、武士としての誇りを取り戻すために戦うというもので、時代劇の基本的なテーマである「武士の誇り」や「忠義」といった要素がしっかりと盛り込まれています。特に、草彅剛さんが演じる格之進の姿には、武士としての強い精神と、復讐者としての冷静さが見事に調和しており、彼の演技によって時代劇の醍醐味が存分に引き出されています。
さらに、囲碁をテーマにした独特の緊張感も、映画の特徴的な要素でした。囲碁の「石の下」という戦術を利用するシーンは、ただのゲームに留まらず、格之進の人生そのものを象徴する場面として描かれています。この静かな心理戦が、最終的な剣での決闘に繋がっていく流れは非常に緊張感があり、派手なアクションとは異なる静かなスリルを感じさせます。
総じて、『碁盤斬り』は、派手さを抑えた静かな展開の中で、しっかりと時代劇の本質を描いた作品です。復讐のテーマを軸にしながらも、父娘の絆や囲碁を通じた知的な戦いが織り交ぜられています。草彅剛さんの静かで力強い演技が映画全体を引き締め、重厚な時代劇としての深みを与えています。
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