映画「母と暮らせば」レビュー
イントロダクション
「母と暮らせば」は、2015年に公開された山田洋次監督の作品で、終戦70年を迎えた日本において、戦争の悲劇と家族の絆をテーマに描かれた映画です。本作は井上ひさしの戯曲「父と暮せば」と対を成す作品として、長崎を舞台に、戦争で命を落とした息子とその母親の再会を描いた心温まるファンタジードラマです。
キャスト情報
- 福原伸子(母親役):吉永小百合
長崎で助産婦として働く母親。戦争で家族を失い、息子・浩二の死を受け入れられずにいます。 - 福原浩二(息子役):二宮和也
長崎の原爆で亡くなった息子。母親の前に亡霊として現れ、彼女と再び語り合う。 - 町子(浩二の恋人役):黒木華
浩二の恋人。戦後も彼のことを想い続けていますが、次第に新しい恋を受け入れようとします。 - 川上教授:橋爪功
復員局の職員:小林稔侍
その他、浅野忠信、加藤健一、広岡由里子、本田望結など豪華なキャストが揃っています 。
あらすじ
映画の舞台は1948年、長崎。原爆で息子・浩二を亡くした母・伸子は、3年後のある日、亡霊となった浩二と再会します。彼女は息子との再会を喜び、彼との会話の中で、戦争の悲惨さや、愛する家族の思い出に浸ります。しかし、浩二は生前の恋人・町子に未練を残しており、母と息子はそれぞれの心の葛藤と向き合うことになります。最終的に、町子が新しい恋を受け入れたことで、伸子もまた自分の心を解放し、安らかに息を引き取ることになります。この物語は、戦争の影響が家族にどれほど深く残るかを静かに、しかし力強く描き出しています 。
評価
「母と暮らせば」は、その重厚なテーマと心に響くストーリーテリングで、多くの映画賞を受賞しました。吉永小百合と二宮和也の親子役の演技は特に高く評価され、観客に強い感動を与えました。また、山田洋次監督が初めて挑戦したCG技術の使用も話題を呼びました。この作品は戦後の日本を深く考えさせると同時に、家族の絆や再生をテーマにした感動作として多くの支持を集めています 。
私の感想
「母と暮らせば」は、単なる戦争を背景にしたドラマではなく、家族の絆や失われた時間の償いについて深く考えさせられる作品です。観終わった後に感じたのは、戦争がもたらした心の傷がどれだけ深く、そしてそれを乗り越えることがいかに難しいかということです。
特に心に残ったのは、吉永小百合さん演じる伸子が、亡霊として現れた息子・浩二と再会し、彼と過ごす時間を通じて徐々に心の整理をつけていく過程です。これは、戦争で家族を失った多くの人々が経験したかもしれない感情を象徴しています。山田洋次監督の描写は、非常に繊細でありながらも力強く、観る者に深い共感を呼び起こします。
また、二宮和也さんが演じた浩二のキャラクターが持つ「悲劇性と喜劇性」のバランスが、この映画に独特の雰囲気をもたらしていると感じました。彼が亡霊として母親に語りかけるシーンは、悲しみだけでなく、どこか温かさや人間らしさを感じさせ、観客を引き込む力がありました。この「笑いと涙」が交錯する瞬間が、戦争の悲惨さを際立たせると同時に、人間の持つ回復力や希望を感じさせます 。
さらに、黒木華さん演じる町子の存在も、物語に重要な深みを与えています。彼女が浩二を想い続ける姿は、戦後の混乱期における愛と喪失の象徴として描かれており、観る者に強い印象を残します。町子の決断と成長を通して、映画は人間の心の強さと、新しい始まりへの一歩を描き出しています。
総じて、この映画は戦争というテーマを超えて、家族、愛、そして再生という普遍的なテーマを扱っています。この作品を通じて、私たちは戦争の記憶を次の世代に伝え続ける重要性を再認識し、平和への思いを新たにすることができるでしょう。
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