WOWOW『密告はうたう2 警視庁監察ファイル』レビュー
イントロダクション
『密告はうたう2 警視庁監察ファイル』は、警察内部における不正・情報漏洩などを扱う“警察の中の警察”――警視庁人事一課(通称:ジンイチ/警務部監察係)を舞台に、内部からの“密告”をきっかけとして警察という組織全体の闇に迫るサスペンスです。前作『密告はうたう 警視庁監察ファイル』で描かれた体制内の対立、信頼・裏切りなどのテーマをベースに、シーズン2ではスケールと緊張感を一層拡大させ、組織の陰謀・過去事件との関連を絡めながら、「警察の存在意義」にも問いを投げかける構成となっています。
松岡昌宏演じる主人公・佐良正輝は、シーズン2でジンイチ配属から2年を経て、組織の中心的存在として指揮をとる立場へ成長しており、1通の密告文を起点に、捜査二課の特殊詐欺捜査との関連、情報漏洩、過去の殉職事件との結びつきなど、さまざまな問題が入り組んで展開していきます。
また、本作は前作キャストに加えて新たなキャラ(浜中文一、マキタスポーツなど)が入り、役割の拡張や人間関係の揺らぎを通じて、組織の複雑さや内部葛藤を描写することを意図しています。
作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
タイトル | 連続ドラマW 『密告はうたう2 警視庁監察ファイル』 |
放送/配信 | WOWOW「連続ドラマW」にて放送・配信 |
話数 | 全8話 |
原作 | 伊兼源太郎『ブラックリスト 警視庁監察ファイル』・『残響 警視庁監察ファイル』 |
監督 | 内片輝、山本大輔 |
脚本 | 鈴木謙一 |
音楽 | 大間々昂 |
プロデューサー | 井口正俊、下田淳行、星野秀樹 |
制作プロダクション | ツインズジャパン |
配信サービス | WOWOWオンデマンド Amazonプライムビデオ |
DVD/レンタル | DVD-BOXおよびレンタル版も発売 |

キャスト紹介(主な登場人物)
以下は主なキャストと役どころです。
役名 | 俳優 | 役どころ・特徴 |
---|---|---|
佐良正輝 | 松岡昌宏 | ジンイチ監察係所属。配属2年を経て、シリーズ2で組織の中核として指揮を執る役割に。前作で後輩刑事・斎藤の殉職を経験しており、その事件の真相もシリーズ2では重要テーマとなる。 |
皆口菜子 | 泉里香 | 1年前にジンイチに配属された監察係員。捜査と監察の現場で佐良と共に動く。 |
能馬慶一郎 | 仲村トオル | ジンイチ内での上司・管理職的立場。佐良の指揮体制との折り合いも描写される。 |
須賀透 | 池田鉄洋 | ジンイチの監察係で、能馬の右腕的存在。組織内部でバランスをとる役割。 |
毛利洋平 | 浜中文一 | シーズン2から異動してきた若手監察係員。新たな視点や緊張をもたらす存在。 |
原西道男 | マキタスポーツ | 監察係の班長的立場。捜査現場・異変時に重要な役割を果たす。 |
宇野祥平 | 宇野祥平 | 元警察官で、捜査線上に立つ人物。関係者として謎を深める役割。 |
戸塚祥太 | 斎藤康太 | 前作より続投。佐良の後輩として刑事時代に殉職した人物。シーズン2ではその死の真相が物語の鍵を握る。 |
宮崎秋人 | 峰 | 特殊詐欺担当捜査員。密告・情報漏洩事件に関わってくる。 |
猪塚健太 | 長富 | 捜査二課長。情報漏洩疑惑の捜査対象や交渉相手として登場。 |
飯田基祐 | 六角 | 警務部長。シリーズ中で射殺事件の被害者となる。 |
渡辺いっけい | 波多野 | 副総監など上層部の立場。組織の権力構造に絡む役割。 |
眞島秀和 | 北澤勝俊 ほか | 継続出演。前作からのキャラクターとして、物語中に影響を及ぼす。 |
ネタバレあらすじ:始まりから結末まで
序章:1通の“密告文”
物語はある日、警視庁の人事一課監察係(通称:ジンイチ)に届いた1通の密告文から動き出す。内容は、捜査二課が追う特殊詐欺事件の捜査情報が、捜査を指揮する管理官によって何者かに漏洩しているらしい、というもの。管理官の関与をほのめかす文面に、ジンイチ内部には早くも波紋が広がる。
ジンイチに異動して2年目の佐良正輝(松岡昌宏)は、上司の能馬(仲村トオル)・監察係長の須賀(池田鉄洋)から、密告の真偽を確かめ、実態をあぶり出す責任者に任じられる。彼には、民間出身の若手監察官・皆口菜子(泉里香)、公安出身の原西道男(マキタスポーツ)、そしてサイバー知識に長けた新加入の毛利洋平(浜中文一)が部下として配される。
佐良はまず、管理官の行動を尾行・挙動確認(行動確認=コウカク)し、不審な動きをつかもうとする中で、密告の発信源や背景を探り始める。だが、調査を進めるうち、想像以上に組織の深部を揺るがす事態へと発展していく。
第2話~第4話:銃撃、トカレフの謎、廃屋での対峙
調査が続く中、第2話で事件は思わぬ方向に転じる。佐良と皆口が何者かに銃撃される。逃げる佐良の目に浮かぶ黒い人影、しかしすぐに見失う。事態がさらに重くなるのは、銃撃に使われた銃弾の線条痕が、2年前、佐良の目の前で後輩刑事・斎藤康太(戸塚祥太)が殉職したときに使われたトカレフの線条痕と一致した、という報告が入るからだ。これにより単なる情報漏洩疑惑は、“過去の未解決事件”とのリンクを示唆するものとなる。
第3話では、皆口が捜査対象の峰(宮崎秋人)と接触していた元警察官・榎本(宇野祥平)を行動確認中、罠にかかり拉致寸前となる。ところが、原西が現場に入り、鉄パイプの下敷きになって重傷を負う。原西がなぜそこに現れたのか、彼自身の過去も謎めいてくる。捜査の主導権は公安部が握るようになり、皆口らはジンイチ本隊から離されかける。
第4話で、毛利の行方が途絶え、佐良と皆口は廃屋へ急ぐ。中に入ると、毛利が榎本に拳銃を突き付けられている場面に遭遇。佐良は榎本を問い詰め、元・YK団幹部の連続殺人事件との関与を追及する。榎本は直前に“互助会”という組織の名前を口にし、密告・情報漏洩の背後にある“暗部”をほのめかす。榎本は逃走し、毛利は無事救出されるが、事件はますます複雑さを増していく。
この段階で、視聴者にも徐々に見えてくるのは、「密告した者は誰か」「なぜ警察内部で情報が漏れるのか」「斎藤の死とのつながり」が、すべて1つの線でつながっている可能性という構図である。
第5話~第6話:揺らぐ内部、銃撃、そして撃たれた警務部長
第5話で、捜査二課長・長富(猪塚健太)への聴取が行われる。能馬が巧みに揺さぶりをかけるが、長富は応じず。だったが思わぬ“事実の小さな突破口”を能馬が語り始め、聴取は完全な失敗にはならない。原西が意識を回復し、皆口は、なぜ原西があの場にいたのかを問いただす展開になる。
第6話では、事態が一気にエスカレートする。警務部長・六角(飯田基祐)が射殺されるという重大事件が発生。佐良が現場に駆け付けると、再びトカレフ銃が使われており、先の撃たれた事件と同じ銃弾の線条痕が確認される。佐良は犯行手口から、富樫(村上淳)が関与している可能性を強く意識するが、須賀らからは「ジンイチの管轄外」として捜査対象から除外されてしまう。佐良は密告・漏洩事案を追いながらも、刑事事件に踏み込む覚悟を固めて動き始める。
この時点で、視聴者は「誰が密告者か」「誰が背後で操るのか」「斎藤を撃った真犯人は誰か」という三大クエスチョンを抱える形になる。
第7話:正体の断片、15年前の事件、裏切りの予感
第7話では、佐良は富樫と直接対峙を試みる。「斎藤を撃ったのはお前なのか?」と問いかけるが、富樫ははぐらかし、「君は俺と同じだ」という言葉を残して逃げる。曖昧な言葉に、佐良の怒りがほとばしる。
同時に、能馬は監察業務から外され、須賀にも命令違反の嫌疑が持ち上がる。ジンイチとしての立場が脆くなる中、佐良たちは自主捜査を進める。やがて、富樫・能馬・波多野副総監(渡辺いっけい)らは、15年前の未解決事件に深く関わっていたという事実が浮上する。過去と現在の事件が複雑に絡み合いながら、真相への布石が次々に打たれていく。
この段階で、視聴者は「富樫=主犯説」「波多野ら上層部=黒幕説」「能馬の裏切り」など複数の可能性を頭に描きつつ、答えを予測できなくなる。
最終話(第8話):工場での対決、真相の顕在化、そして余白
クライマックスは、斎藤が殉職したあの工場が舞台となる。富樫は波多野副総監を誘拐し、かつての現場へと連れ去る。「最後の仕上げにふさわしい場所だからです」と告げた上で。
毛利と須賀の情報提供により、佐良と皆口は富樫の目的地を察知。二人は覚悟を持って最終決戦の場に赴く。そこでは、斎藤の死の真相、富樫の動機、組織の黒幕たちの関与と“互助会”の実態が次々と明らかになる。
以下、最終的な真相を含む結末部分です――
- 斎藤殺害と情報漏洩のつながり
斎藤は15年前の未解決事件と何らかの形で接点を持っており、当時の調査情報が組織内で操作・隠蔽されていた。斎藤を撃った銃=トカレフは、富樫らがその封印された過去を暴かれることを恐れて使ったものだった。 - 富樫の正体と動機
富樫はかつての未解決事件を巡り、組織内の“守秘義務”と“便宜供与”を受けていた側の人物。斎藤が真相に迫ろうとしたため、それを潰すために情報漏洩と密告を戦略的に使い、混乱を誘った。さらに、波多野ら上層部がその背後で糸を引いていた。 - “互助会”の意味
“互助会”とは、警察官たちの間で密かに情報共有・便宜供与をする裏組織的なネットワーク。密告と隠蔽と利益相反がこの「互助会」という存在を介してつながっており、富樫はそこを操る一端を担っていた。 - 最終決戦と選択
佐良・皆口は富樫を追い込み、彼の口から真実を引き出させる。波多野も露見し、能馬・須賀らの立場も揺らぐ。最終的には、ジンイチ(監察係)としての役割を全うし、「警察の中の警察」が持つ使命の重みを再確認するような結末を迎える。警察という組織の正義と暗部、そして許されざる裏切りと対峙する物語は、視聴後もしばらく心に残る。
最終話のラストには、善と悪の境界線があいまいになり、「正義とは何か」「誰を信じるべきか」といった問いが胸中に響くような余韻を残して幕を閉じます。

🎬 私の感想:密告はうたう2 ― 正義の境界線に立つ男たち
前作からずっと観ているシリーズだけど、今回はさらに“警察の中の警察”という異質な世界のリアリティが増してた。
まず一言で言うと、**「人間の正義のグラデーション」**を描いたドラマ。
スーツ姿で淡々と動く人たちなのに、胸の奥で爆発しそうな葛藤がずっと渦巻いてる感じがたまらなかった。
💥 松岡昌宏の“静かな狂気”
佐良を演じる松岡昌宏さん、前作よりもずっと重くて深い。
もう「熱血刑事」じゃなくて、“組織の闇を見すぎた男”の顔をしてるんですよね。
感情を押し殺しながらも、目の奥ではずっと怒りが燃えてる。
上司に逆らえない立場と、正義を貫きたい自分の狭間で揺れてる姿がリアル。
あの「君は俺と同じだ」と言われた時の表情、ほんと鳥肌ものでした。
怒りよりも、悲しみに近い静かな狂気が滲んでた。
👩💼 泉里香の“冷静な熱”
泉里香さん演じる皆口菜子もよかった。
女性らしい優しさというより、“現場のリアリスト”って感じ。
理屈じゃなく空気で動くタイプの佐良とは違って、常に「一歩引いて観察してる」感じが絶妙で、バディとしてのバランスが完璧。
彼女がいることで、物語が一気に硬派すぎず、人間味が出てました。
しかも無理に恋愛要素を入れないのがまた良い。
「現場に恋愛はいらない」っていう空気、ちゃんと貫かれてる。
🔫 “トカレフ”が象徴する闇
今回のキーワード、“トカレフ”がまた深い。
ただの拳銃じゃなくて、**「過去と現在をつなぐ呪いの象徴」**みたいな存在になってる。
誰が撃ったのか? なぜ同じ銃が何度も現れるのか?
そのたびに、画面の緊張感がギュッと締まるんです。
特に、銃撃シーンの無音演出とスローモーションの使い方がすごくうまくて、WOWOWドラマらしい“静かな重圧”を感じました。
🧩 “互助会”という言葉の重さ
中盤から出てくる「互助会」。
名前だけ聞くと優しい響きなのに、実際は“汚職ネットワーク”。
ここが一番ゾッとしました。
「助け合い」の名のもとに、不正を見て見ぬふりをする組織の構造。
まるで現実の日本社会の縮図のようで、リアルすぎて笑えない。
観ながら、「もしかしてこれ、警察だけじゃなくてどの世界にもあるんじゃないか?」って考えちゃいました。
⚖️ 正義は人の数だけある
最終話の工場シーンは圧巻でした。
富樫が波多野副総監を連れ込んだあの暗い空間。
照明も音も最低限で、まるで観ているこちらまで取り調べを受けているような息苦しさ。
あの場所で語られる「正義」「裏切り」「復讐」って言葉、どれも重くて、簡単に“どっちが悪い”とは言えない。
富樫のやり方は間違ってるけど、彼の中にも信念があった。
佐良も最後には、その信念の一部を理解してしまったように見えて、ただの勧善懲悪では終わらなかったのが良かった。
🎭 観終わって残る“後味の良いモヤモヤ”
このドラマのすごいところは、スッキリ終わらないこと。
悪が裁かれても、心が晴れない。
でも、それこそが“現実”だと思う。
「正義を貫く」という言葉の裏に、どれだけの犠牲と孤独があるかを痛感しました。
観終わってからもしばらく頭から離れない。
無音のエンディング、あれも完璧でしたね。

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