『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』レビュー
イントロダクション
霧のように漂うネオンの光と、ざわめく雑踏。
渋谷、1984年──バブルの前夜。
人々が未来に期待をかけ、街は鮮やかなうねりに包まれていた。
そんな渋谷の一角に、「舞台」がある。
だがこの物語では、主役も観客も街そのものであり、舞台裏の葛藤がいちばん見どころだ。
タイトルは、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』──
“楽屋”とは、誰にも見せぬ顔、孤独、願い、迷いの集合体なのかもしれない。
脚本を手がけるのは、25年ぶりにゴールデン帯ドラマに戻ってきた三谷幸喜。彼自身の青春をモチーフに、群像劇として若き魂を描き出す。
主人公は、蜷川幸雄に憧れる演出家の卵・久部三成(菅田将暉)。
やがて彼の横暴さゆえに劇団を追われ、自らの“楽屋”を探す冒険が始まる。
“街が舞台なら、楽屋はどこか”—この問いは、誰の心にも問いかけたい。
誰もが抱える隠れた“舞台裏”を、このドラマは鮮烈に映し出そうとしている。
作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
タイトル | もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう |
放送開始 | 2025年10月1日(水)22:00〜22:54(フジテレビ系/水10枠) ※初回は30分拡大放送(22:00〜23:24) |
ジャンル | 青春群像劇(ドラマ) |
舞台設定 | 1984年(昭和59年)、渋谷および架空の坂道「八分坂(はっぷんざか)」 |
原作 | 完全オリジナルストーリー(脚本・三谷幸喜による) |
脚本 | 三谷 幸喜 |
演出 | 西浦正記 |
音楽 | 得田真裕 |
主題歌 | YOASOBI「劇上」 |
プロデューサー | 金城綾香、野田悠介 |
制作 | フジテレビ(制作プロデュース:古郡真也) |
配信/放送形式 | 地上波放送+見逃し配信など(TVer 等のサービスでの配信予定あり) |
キャスト紹介
- 久部三成(くべ・みつなり) — 菅田将暉
野心と虚勢を纏った青年。演劇への渇望は強いが、それを言葉にできず、しばしば激しい態度で周囲を振り回す。劇団から去る運命を背負うその先に、「楽屋の在り処」を探す旅路が待つ。 - 倖田リカ(こうだ・りか) — 二階堂ふみ
踊ることに魂を燃やすダンサー。華やかな舞台の影で、虚栄と孤独のせめぎ合いを抱えている。薄明の街角で、俯く瞬間にしか見えない本心を持つ。 - 蓬莱省吾(ほうらい・しょうご) — 神木隆之介
駆け出しの放送作家。三成、リカらと交錯する立ち位置で、言葉を紡ぐことで自分を確かめようとしている。街のざわめきの中で、小さな静寂を探す男。 - 江頭樹里(えがしら・じゅり) — 浜辺美波
渋谷の八分神社に仕える巫女。祈りと日常が交差する場所で、街と運命を結びつける存在。彼女の沈黙には、誰かの願いが宿る。 - 風呂須太郎(ふろす・たろう) — 小林薫
渋谷のジャズ喫茶「テンペスト」のマスター。長年街を見つめてきた老演者のような包容力。三成を訪ね、時に手を差し伸べ、時に鋭く問いかける。 - トニー安藤(とにー・あんどう) — 市原隼人
劇場の用心棒。強面で寡黙だが、過去と現在の狭間に居場所を失った男。舞台裏での闇を映す影のような存在。 - 大瀬六郎(おおせ・ろくろう) — 戸塚純貴
渋谷の交番勤務の警察官。街の秩序を守ろうとするが、演劇や夢との摩擦に苦しむ。正義と感情が揺れる。 - パトラ鈴木(ぱとら・すずき) — アンミカ
劇場のダンサーたちの“姉御”的存在。強さと優しさの間で揺れる、懐深い女性。 - 毛脛モネ(けずね・もね) — 秋元才加
シングルマザーでダンサー。朝雄という息子を抱える。日々の生活に追われながらも、舞台への渇望を捨てきれない。 - 毛脛朝雄(あさお) — 佐藤大空
モネの息子。母の背中を見つめつつ、自らの夢を秘めている存在。 - いざなぎダンカン — 小池栄子
第1話から強烈な存在感を放つダンサー。華やかさと影を合わせ持ち、物語の鍵を握る。
エピソード1:ネタバレあらすじ
夜の帳が下りた渋谷。ネオンの残像が空気を震わせ、雑踏の音が呼吸のように街を包む。
八分坂の麓、小さな劇場「WS劇場」の扉がかすかに軋む。
――一歩入れば、そこは熱と冷気が交錯する別世界。
壁には舞台衣装、脚立、照明器具、そして焦げたカンテラの残骸。
舞台袖の暗がりには、夢焦がれる者たちの吐息がこぼれていた。
三成はその場に立ち、心臓の鼓動を聴いていた。
かつて彼の強引さゆえに、劇団から放逐された。
「演出」への執着が、傷のように彼を苦しめていた。
今日はその劇場で、再起のチャンスを望む仲間たちと出会う約束があった。
リカ。螺旋を描くステップのように、夜の舞台を踊る。
だが舞台が終わると、彼女は裏手の窓際へ去りかけ、煙草を突き出して火をつけた。
その背後には、冷たい街灯が斜めに伸びる影。
「見られたくない顔」がある──そんな気配。
省吾はメモ帳を閉じ、書きかけの原稿を胸に抱えながら、控え室へ向かう。
そこに待つのは、不安と期待の交差点だ。
他の登場人物たちが合流し、視線がぶつかる。
風呂須太郎が静かにコーヒーを差し出し、
「君たちには“楽屋”が必要だろう?」と呟く。
その声が、ひそやかな合図のように胸に響く。
ある瞬間、ダンサーいざなぎダンカンが現れて、場を支配する。
彼女の存在感は他を圧し、「この街の楽屋」が彼女を中心に揺らぎだす。
闇の中で、ある人物が足を踏み入れ、悲鳴に近い叫びがこだまする。
劇場の灯りがちらつき、誰かの涙が濡れていた。
ラスト、三成は舞台を見つめ、その背後に広がる暗幕の隙間を見つめた。
彼の心には問いがある。——楽屋は、本当にどこにあるのだろう。
それは“舞台の裏”ではない。
そこは、誰かの心の中、誰かの傷跡、誰かの願いと孤独が集う空間。
暗転。スクリーンに浮かぶタイトル。
次回への予感が、ぐっと胸に詰まる。
1話をご覧頂きありがとうございました✨
— 水10ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』【フジテレビ公式】 (@moshi_gaku) October 1, 2025
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次週予告📺 pic.twitter.com/4zeHHtQNNa
私の感想
正直に言うと——予告がド派手で「これは来たぞ!」って身構えた分、1話はやや肩透かし。
豪華キャストが一斉に並ぶ感じは“俳優の紅白”みたいでワクワクするのに、物語の芯がまだ顔を出してこない。例えるなら、めちゃくちゃ高級な食材で作った前菜がずらーっと出てくるのに、メインがまだ来ない感じ。お腹は鳴ってるのに!笑
良かったのは“舞台/楽屋”モチーフのビジュアルと空気感。照明の切り替えや小道具の使い方は、まさに「表」と「裏」を行き来する演劇っぽさがあって好き。音楽もムードづくりは抜群で、クライマックスの手前で「お、ここから熱が上がる?」って一瞬ギアが入る瞬間がある。…が、そのまま次週へ、の溜めで終わるので、予告の熱量に比べると第1話の満腹感は控えめ。
“少し期待外れ”に感じたポイントは3つ。
- キャラ多めで掘り下げ薄め:顔見せ回ゆえに仕方ないけど、誰に感情を乗せればいいのかまだ定まらない。
- テンポが重ため:世界観の仕込みが多くて、物語の推進力より「準備」の印象が先行。
- テーマの提示が遠回り:「“楽屋”ってつまり何?」の答えがまだ靄の中。ここをズバッと刺してくれたら一気に化けそう。
とはいえ、見切らない理由もハッキリあって——
- セリフの端々に“刺さる言葉の種”が撒かれてる。後半で芽吹けば一気に評価が跳ねるタイプ。
- ビジュアルと美術の説得力は本物。空間がキャラクターを喋らせてる。
- 群像の線が交差して「楽屋=心の裏側」の正体に手が届いた瞬間、物語がグッと加速しそう。
今後に期待したいこと
- 主要キャラ2〜3名の内面をガツンと深掘り(“楽屋に隠してるもの”を具体で見せてほしい)
- 伏線の早めの小回収(1話で撒いた小ネタを2話でサクッと返すだけでも体感速度が上がる)
- 表/裏の反転する快感シーン(舞台上の笑顔→楽屋の本音、みたいなギャップのキレ味)
第1話の手応えは**“素材最強、味見はまだ”。
このタイプは中盤から一気に旨味が出ることがあるので、私はもう少し様子見。もし次回以降でキャラ同士の線が一本に繋がって、“楽屋”の意味がズドンと腹に落ちたら、予告の熱量に追いつくはず。
暫定スコアは3.2/5**。伸びしろは十分。ここから面白くなって、私の手のひらが高速回転する未来に期待してます!
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