Netflix『ビリオネアズ・シェルター』レビュー
イントロダクション
「ビリオネアズ・シェルター」(原題未記載)は、2025年にNetflixで配信がスタートしたスペイン発のサスペンスドラマシリーズ。富裕層が世界的な混乱から逃れるために設計された高級地下シェルターに避難し、閉ざされた環境の中で家族関係や過去の確執、秘密が次第に暴かれていく、人間ドラマとサバイバル的要素と心理的葛藤が交錯する物語です。製作には「ペーパー・ハウス」などで知られる制作陣が携わっており、謎解き・ヒューマンドラマ好きには興味をそそられる設定です。
作品情報
- タイトル:ビリオネアズ・シェルター(Billionaires’ Shelter)
- 配信:Netflix(2025年8月配信開始)
- 話数:全8話
- ジャンル:サスペンス/ヒューマンドラマ
- 対象年齢:16歳以上推奨
- 製作:『ペーパー・ハウス』の制作陣による新作
キャスト紹介
- パウ・シモン(マックス)
元受刑者で主人公。過去の事故と向き合うためシェルターに入る。 - ミレン・イバルグレン(ミネルバ)
シェルターを統括する女性。謎多き存在。 - アリシア・ファルコ(アシア)
マックスの元恋人の妹。複雑な感情を抱える。 - ホアキン・フリエル(ギレルモ)
アシアの父。マックスへの不信と葛藤を抱く。 - カルロス・サントス(ラファ)
マックスの父。息子をシェルターに入れる決断を下す。 - ナタリア・ベルベケ(フリーダ)
他の家族の一員。穏やかだが秘密を抱える。 - モンセ・クアリャル(ビクトリア)
エリート層の女性。人間関係に波紋を広げる。
あらすじ※ネタバレあり
導入:豪華地下シェルター“キメラ”へ
第三次世界大戦の兆しに揺れる世界——億万長者とその家族が、湖の真下に造られた高級地下シェルター「キメラ・アンダーグラウンド・パーク」へと集う。長期自給自足が可能な“理想の避難所”のはずが、入居早々から2つの家族の確執が燻りはじめる。主要人物は、若者マックス、その父ラファ、そして対立する側の父ギジェルモと娘アシア。施設を取り仕切るのはミネルバだ。
第1話の“引っくり返し”:世界の終末は嘘だった
終盤で判明するのは、外の“核アポカリプス”は捏造という事実。ニュース映像や警報は仕組まれており、住人たちは“安全のため”ではなく別の目的で地下に封じ込められていた。ミネルバこそがこの茶番の設計者で、後に彼女自身が**「史上最大の横領計画」と呼ぶ金銭スキームの核を握っている。つまり“避難所”は、富裕層から資産を吸い上げるための巨大な罠**だった。
因縁の再燃:マックスとアシアの“過去”
キメラに連れてこられたマックスは、過去の事故と服役歴をめぐる影を抱える。相手方の家族であるアシアは、その出来事をめぐる疑念と怒りをいまも拭えず、父ギジェルモはラファに圧力をかけてまで真相を自分に有利に運ぼうとしてきた過去が示唆される。“安全な箱庭”は、やがて復讐と贖罪の密室劇へと変質していく。
ミネルバの計画:富裕層ビジネスの“究極形”
表向きは“救済”を謳いながら、ミネルバは**資産家心理(恐怖・虚栄・選民意識)**を巧妙に突く。閉鎖環境で競わせ、疑心暗鬼を煽り、資金の流れと主導権を握ることで、富の搾取(横領)を完成させようとする。物語は、2家族のメロドラマ的対立を縦糸に、“富と恐怖”を利用した巨大詐術を横糸に編み上げる。
終盤〜結末:揺らぐ秩序、露わになる“避難所”の本性
閉鎖空間の緊張が極限に達するなか、施設への攻撃や事故が発生し一同は安全区画へ退避。表の秩序は崩れ、対立していた家族同士も生存のための現実的な共存を選ばざるを得なくなる。だが“外の惨状”が偽装だった事実と、ミネルバの搾取構図が明らかになった今、キメラは“楽園”ではなく富の収奪装置に過ぎないことが露見。物語は真の責任追及と決着が先送りされる形で幕を閉じ、継続(続編)を示唆する余韻を残す。
私の感想
「ペーパー・ハウス」の制作陣が関わっていると聞いた瞬間、正直テンション爆上がりでした。あの手に汗握る頭脳戦と、クセの強いキャラクターの掛け合いをまた楽しめるのかとワクワクして再生ボタンをポチッと押したんですが……うーん、ちょっと肩透かし感もありました。
もちろん、豪華地下シェルターという舞台設定は抜群に面白いです。外の世界が崩壊しているのに、地下ではワイン片手に優雅な食事。ところが、蓋を開ければ人間関係が崩壊寸前というギャップが見事。でも、「ペーパー・ハウス」で味わったようなジェットコースター級のスリルやトリッキーな仕掛けは少なめで、どちらかというと“じっくり人間観察ドラマ”という印象でした。
中盤は特に「もうちょい畳みかけるような展開が欲しい!」とジリジリする場面が多かったです。キャラクター同士の心理戦や秘密の暴露は面白いんですが、どうしても既視感があり、「これペーパー・ハウスのスタッフなら、もっとド派手にできたのでは?」と期待してしまう自分がいました。
とはいえ、終盤の「世界の終末はフェイクだった」という種明かしはグッときました。視聴者を裏切るどんでん返しがようやく来た!という感じで、ここはやっぱり制作陣の真骨頂だと思います。
総じて言えば、私は★★★☆(3.5/5)評価。決して悪くないし最後まで観てよかったと思える作品ですが、「ペーパー・ハウス」のような中毒性を期待すると少し物足りないかもしれません。でも逆に、“あの緊張感よりも、じわじわ崩れていく人間関係を楽しみたい”って人には合うと思います。
ブルグランキング


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