『PERFECT BLUE』レビュー
■はじめに
「PERFECT BLUE(パーフェクトブルー)」というタイトルを耳にしたことがある方は多いかもしれません。1998年公開のアニメ映画でありながら、その内容は非常に深く、心理的な恐怖と緊張感に満ちた作品として、今もなお語り継がれています。
私自身、今敏監督の作品に触れるのはこれが初めてでしたが、その衝撃的な映像とストーリー展開に引き込まれ、一気に最後まで見入ってしまいました。この記事では『PERFECT BLUE』の作品情報、あらすじ、そして私なりの感想をお届けします。
■作品情報
- タイトル:PERFECT BLUE(パーフェクトブルー)
- 監督:今敏
- 原作:竹内義和『パーフェクト・ブルー 完全変態』
- 脚本:村井貞之
- 制作:マッドハウス
- 公開年:1998年2月28日
- 上映時間:81分
- ジャンル:サイコスリラー/アニメーション
- レーティング:R15+
今敏監督の長編デビュー作であり、のちに『千年女優』や『パプリカ』など、世界的評価を得るきっかけとなった記念すべき一作です。
■あらすじ
主人公・霧越未麻は、人気アイドルグループ「CHAM!」のメンバーとして活動していましたが、女優への転身を決意します。アイドルとしての人気は上昇中だったにも関わらず、未麻は自分の将来を見据えて、演技の道を選びました。
ところが、彼女が女優として歩み始めた道は、想像以上に過酷でした。出演するドラマでは過激なレイプシーンを演じ、さらに写真集ではヌード撮影を行うなど、これまでの清純なイメージとは大きくかけ離れた仕事が続きます。自身の変化に戸惑う未麻。そこに追い打ちをかけるように、「未麻の部屋」というウェブサイトが登場します。
そのサイトには、まるで未麻本人が日記を綴っているかのように、彼女の私生活や感情が詳細に書かれていました。しかし未麻は、そのサイトの存在を知らず、書き込みもしていません。やがて、彼女の周囲で不可解な事件が相次ぎ、ドラマの関係者が次々と殺害されていきます。
そして未麻自身も、現実と幻想の区別がつかなくなっていきます。鏡の中に映るアイドル時代の自分、ファンに追いかけられる恐怖、夢の中のような不可思議な出来事。誰が自分を狙っているのか? もしかして、自分自身なのか?
未麻の精神は徐々に崩壊していきます。そして、驚きの真相が明らかになったとき、観る者は「自分が観ていたものが本当に現実だったのか?」という問いに立ち返ることになるのです。
■感想
『PERFECT BLUE』を観終えたあと、正直なところ「頭が混乱するけど、すごく面白かった」という感覚が残りました。最初は普通の芸能界ドラマかと思っていたのに、気づけば未麻と一緒に現実と幻想の境界をさまよっていたような不思議な気持ちになりました。
映像のテンポや編集の見せ方が本当に巧みで、どこまでが現実でどこからが夢なのかがわからなくなる構成にドキドキしっぱなしでした。特に、“もう一人の未麻”が現れてくるシーンはぞわっとする怖さがあって、でも目が離せない…そんな緊張感に包まれています。
ネット上で誰かに勝手に「自分」を語られる感覚、他人の期待と自分の本音とのギャップ、それがどんどん膨らんでいく不安感…。25年以上前の作品なのに、今のSNS時代にも通じるリアルなテーマがたくさん盛り込まれていて驚きました。
ホラーというより“じわじわと心を蝕まれていく”ような怖さがあって、静かに、だけど確実に精神を追い込んでいくようなサスペンスがたまりません。
未麻が最後にたどり着いた答えに、少しホッとした気持ちにもなりました。観終わったあと、自分自身のアイデンティティや、他人からどう見られているかについて考え直すきっかけにもなる、とても印象深い作品でした。
■まとめ
『PERFECT BLUE』は、今敏監督の才能が光る名作であり、ただのサスペンスアニメでは終わらない深みがあります。芸能界の裏側、ファン心理、ネット社会、そして“自分とは何か”という根源的なテーマまで描き切った、濃密な心理スリラー。
映像や演出の力に引き込まれながら、観る側も未麻と一緒に心の迷路を歩くことになります。ちょっと怖いけど、ものすごく引き込まれる。そんな“静かな狂気”に満ちた作品を、ぜひ一度体験してみてください。
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