Netflix『テプン商事』レビュー
イントロダクション
1997年のIMF通貨危機を背景に、遊び人の青年が父の中小商社を継ぎ、“社長”としても“人”としても成長していく——そんな等身大のサバイバルと再生を描くヒューマンドラマ。主演は2PMのジュノ、ヒロインに『Pachinko』のキム・ミンハ。ノスタルジックな90年代の空気を丁寧に再現しながら、家族・仲間・恋の温度を積み上げていく骨太な成長譚です。
作品情報
- タイトル:テプン商事(英題:Typhoon Family)
- 配信:Netflix(日本独占配信)/tvN放送
- 話数:全16話(予定)
- 時代背景:1997年・IMF通貨危機期
- ジャンル:TVヒューマンドラマ/ロマンス/職場ドラマ
- 制作:演出 イ・ナジョン、制作 キム・ドンフィ、脚本 チャン・ヒョン
- 出演:イ・ジュノ、キム・ミンハ、キム・ミンソク ほか
- 備考:ノスタルジックで心温まるトーン、職場×成長要素が核。
🎭 キャスト・登場人物紹介(拡充版)
役名 | 俳優 | 関係・立ち位置 & 特徴 |
---|---|---|
カン・テプン(Kang Tae-Poong) | イ・ジュノ | 主人公。Obnoxiousで自由奔放な青年から、父の会社を受け継ぎ“社長”として立ち向かうことになる。 |
オ・ミソン(Oh Mi-Sun) | キム・ミンハ | ヒロイン。テプン商事で経理を務めながら、妹たちを支える家計の柱。真面目で堅実、テプンの変化を引き出す役割。 |
カン・ジニョン(Kang Jin-Young) | ソン・ドンイル | テプンの父、テプン商事の創設者。会社と家族の重責を背負ってきた人物。急逝により物語を動かすキーとなる。 |
チョン・ジョンミ/ユン・ジョンミ(Jung Jeong-Mi) | キム・ジヨン | 家族・親世代サイドの人物として、ジニョン夫人など家庭を支える立場。 |
ワン・ナモ(Wang Nam-Mo) | キム・ミンソク | テプンの親友。気楽さや友情の側面を支えるキャラクター。 |
ピョ・ヒョンジュン(Pyo Hyun-Joon) | ム・ジンソン | ライバル・対抗勢力サイド。ピョ商船との関係や対立要素を担う。 |
クォン・ハンソル(Kwon Han-Sol) | クォン・ハンソル | オ・ミホ(ミソンの妹)の役。家族構成の中で若い世代の葛藤を見せる役割。 |
コ・マジン(Ko Ma-Jin) | イ・チャンフン | テプン商事/周辺企業の社員・関係者として、実務に絡む役割を担いそう。 |
キム・ジェファ(Kim Jae-Hwa) | キム・ジェファ | 社内スタッフあるいは周辺の管理担当者など。背景を支える脇役として登場。 |
キム・ソンイル(Kim Song-Il) | キム・ソンイル | 社員または商社取引先など、会社の内部・外部をつなぐ人物。 |
イ・サンジン(Lee Sang-Jin) | イ・サンジン | 社内の社員、あるいは帳簿・経理まわりで関与する可能性が高い役割。 |
キム・サンホ(Kim Sang-Ho) | キム・サンホ | ピョ商船の代表 “ピョ・バクホ” のような立場で、商業勢力を代表するキャラクター。 |
◆配信開始
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) October 11, 2025
Netflixシリーズ『テプン商事』(韓国)
イ・ジュノ(2PM)出演
1997年に起きた「IMF危機」
経済危機のなか翻弄される
中小企業の人々と社長・テプンの姿を描く
成長ストーリー。#テプン商事 pic.twitter.com/cg9NUcSY4k
第1話 あらすじ※ネタバレあり
プロローグ:陽光と余裕の序盤
物語は、1997年の晴れやかな朝から始まる。狎鴎亭(アックジョン)の高層ビル群、当時のファッション、華やかな雰囲気──テプンはその風景に溶け込むように、仲間たちとクラブ若者文化を謳歌している。「オレンジ族」の象徴として、彼の自由気ままな日常がまず見える。
テプンは、見た目も振る舞いも軽やかさを纏い、名刺交換会や社交の場でも目立つポジション。ポケベルのメッセージや夜の街のネオンが、当時の空気を引き寄せる。
父カン・ジニョンは、テプン商事の社長として、社員を鼓舞し、賞与を出すなど順風なように見える。会社の未来を見据えて大型契約の交渉にも動くが、すでに“影”は漂っている。
ある日、会社に電話が入り、ジニョンは「テバン繊維」の大きな契約を持ち上げられる。チャ・ソンテクら幹部たちはその話に歓声を上げる中、ジニョンは顔を曇らせる。オ・ミソンは「この契約、負担が大きすぎる」と異を唱える。利息の構造、収益性と与信リスクを見越して、「無理をしてはいけない」という現実的視線を持つミソンの読みは鋭い。
この段階で、テプン商事の外見的には「大きなチャンス」に見える契約が、実は社内で葛藤を生む種となる伏線として提示される。
亀裂と前兆:会社の苦境が露に
その契約を巡る期待と不安の中、会社は早くも揺らぎを見せる。ジニョンが銀行を訪れた後、「先月、取引先・キソン化学からの手形が不渡りになった」という報せが入る。社員に向けて「今月の給料は遅れるかもしれない」と謝罪するジニョンの姿は、社長としての重責のリアルを初めて露わにする場面だ。
ジニョンは自分が持っていた資金を使って取引先に手を差し伸べていたが、その綱渡りが限界を迎えていた。会社の“見えない借金”と“信用の崩壊”のラインがじわじわ迫ってくる描写。社員たちはざわめき、先の不安に顔をこわばらせる。
やがてジニョンは社長室で倒れ、入院することになる。テプンは父のもとに付き添うが、ナイトクラブで友人たちが窮地に陥ったとの知らせを受けて現場を離れる。その後、それがライバル・ピョ・ヒョンジュンの策略だったと知り、慌てて戻るなかで、テプンはワン・ナムモらに「父の容体が危険かもしれない」と急かされ、病院へ向かう。
クライマックス:父の死と国家危機の足音
病院で待つテプンが受けたのは、父親の急逝の事実。まだ信じきれないまま、白布を被せられた父の姿を目の当たりにする。驚愕と虚無、後悔と怒りが交錯する瞬間だ。
その直後、テレビの速報が流れる。韓国政府がIMFへの救済支援を申請し、事実上の国家債務不履行を認めたとのニュース。視覚的に映し出される対比──個人/会社の崩壊と国家の揺らぎが、一つの転換点を形成する。テプン個人が抱える危機と、社会全体を揺るがす危機が同時に提示され、彼の人生はこの1話で根底から引き裂かれていく。
結末直前、テプンはただ立ち尽くす。過去の享楽や無邪気さは、もう背後の幻影になっている。第1話の幕が下りるとともに、「この男は今、完全に立ち向かわなければならない嵐の前夜にいる」ことを強く印象づける。
見どころ・演出的工夫と伏線要素
- 明暗の対比で見せる“前と後”のギャップ
前半は自由で軽やかなテプンの青春、後半は沈む重みのある現実。ドラマはこの対比を丁寧に作って、第1話だけで“波の前触れ”の感覚を観客に刻む。 - キャラクターの立ち位置を明確に見せる対話シーン
ミソンの「この規模は負担過ぎる」という発言、ジニョンの苦悩、幹部たちの安易な熱狂……。物事をそのまま受け入れる者、抵抗を試みる者、現実を見ようとする者、さまざまな視点が提示され、今後のチーム内の衝突を予想させる。 - 小物・演出の“時代性”のこだわり
ポケベル、電話、夜のネオン、洋服、クラブ風景――1997年のディテールがただの時代描写にならず、物語の肌合いを強める装置となっている。 - ラストに挿入されるマクロニュースとの重なり
父の死後、すぐに流れるIMF救済申請ニュース。テプン商事の倒産・崩壊危機と、国家レベルの破綻危機が鏡のように重なり、物語のスケール感を瞬時に拡張させる。 - 父子関係の影とわだかまりの提示
テプンが父の靴を揃えておく、夜に温室でバラを植える、親への認められ願望──これらの象徴的な行動が、テプンとジニョンの関係を物語る“沈黙の語り”として散りばめられている。父が倒れる前の会話で、ほんの短い時間に『会話なき父の否定/突き放し』が挿入され、テプンの心に刻まれるわだかまりを予感させる。
第1話を通して感じたテーマと問い
- “青年の自由”は、いつ“責任”へ変わるのか?
テプンは自由を肯定的に生きてきたが、父の死を契機に、そのままではいられない立場に追い込まれる。 - 見えている「光景」の裏にある“借金”と“信頼の崩壊”
順調そうに見える会社でも、不安定な契約構造や与信リスクを内包しており、契約の“裏側”を読む視点こそが現実を支配する。 - “私的な喪失”と“社会的崩壊”の重なり
父の死という喪失が、国家危機という大局と同時進行することで、テプンという個人の再起が国家の運命と結びつく布石になっている。
私の感想
いや〜第1話からめっちゃ面白かったです!
まず何より、90年代の空気感の再現度がすごい。ポケベル、肩パッド、オレンジ族スタイル、街の看板のフォントまで全部“当時の韓国”で、本気でタイムスリップした気分でした。あのバブルの残り香みたいなきらびやかさと、経済崩壊の前触れが同居してる感じが最高にリアル。
そして主人公テプン(イ・ジュノ)が良い意味で「しょうもない」スタートを切るのが魅力的でした…笑
父親の会社なんて全く興味ない遊び人で、車と服と夜遊びが全て、みたいなタイプ。だけどそんな彼が、父の死と会社の崩壊で一気に現実の荒波に放り込まれる。
そのギャップが面白くて、最初は「この人、ほんまに社長できるの!?」ってツッコミながら観てたんですけど、ラストで父親が亡くなるシーンにはやられました…。
“軽さ”が一瞬で“重み”に変わるんですよね。
ジュノの演技がうまいのもあるけど、演出のコントラストの付け方が見事。前半は音楽も明るくてテンポが軽いのに、後半は一転して静寂と陰影が広がっていく。まるで「人生のBGMが変わる瞬間」を見ているような感覚。
あと印象的だったのが、ヒロインのキム・ミンハ。『Pachinko』での印象が強かったけど、今回も存在感抜群。
仕事に対して真っ直ぐで、でもどこか達観したような冷静さがある。テプンに「あなた、今何してるの?」とズバッと現実を突きつけるところ、最高にスカッとしました。
あのやり取りでこのドラマのテーマが見えた気がします──“自由だけでは生きられない時代に、どう責任を取るか”。
そして個人的に一番ゾクッとしたのは、ラストのIMFニュースの入り方。
父親の死を受け入れきれないテプンの沈黙に、テレビから「韓国政府がIMFに支援要請」というニュースが流れる。
国家と個人の破綻が同時に訪れる構成が、本当に見事。
これ一話目でここまで重ねてくるか…!と思いました。
経済ドラマとしての骨太さもあって、単なる青春ものじゃない“時代を生きる群像劇”の予感。
全体的にテンポも良くて飽きさせないし、カメラワークもセンスがあって、ちょっと映画みたいな映像美もありました。
「仕事ドラマ」「家族ドラマ」「時代ドラマ」全部の要素がバランス良く混ざっていて、めちゃくちゃ完成度が高い。
ジュノがこの“駄目息子社長”をどう成長させていくのか、今後が本当に楽しみです。
次回予告の“社員総会シーン”も気になるし、もしかしてあの取引先の裏切りが伏線になってるんじゃ…?とか色々考察したくなる要素も満載。
第1話からしっかり心掴まれました。
正直、“韓国版バブル崩壊ヒューマン成長譚”として、今季一番期待できる作品かもです。
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