Netflix映画『This is I』レビュー
『This is I』は、泣かせにくる映画というより、「生きるって、こういう痛みの積み重ねだよね…」って、じわじわ効いてくるタイプ。
少年ケンジが“アイドルになりたい”と願うところから始まって、居場所を失い、見つけ、また揺らいでいく。見ていて楽なシーンは多くないのに、なぜか最後まで目が離せない。Netflixの作品ページでも“実話に基づく”と明記されています。
作品情報
- 作品名:Netflix映画『This is I』
- 配信:Netflix 世界独占配信(2026年2月10日)
- 年齢区分:16+
- ジャンル:ヒューマンドラマ/LGBTQ+/実話に基づく
- あらすじ一言:「聖子ちゃんみたいなアイドルになりたい」少年ケンジが、ショーパブと医師との出会いを経て“アイ”として輝き始める物語
- 出演(主要):望月春希、木村多江、千原せいじ
キャス紹介
| 俳優 | 役名(わかる範囲) | メモ |
|---|---|---|
| 望月春希 | ケンジ/アイ | 主人公 |
| 木村多江 | 初恵 | 母 |
| 千原せいじ | 和孝 | 父 |
| 中村 中 | アキ | ショーパブのママ |
| 吉村界人 | タクヤ | ショーパブの男性ダンサー |
| MEGUMI | 裕子 | クリニックの看護師 |
| 中村獅童 | 鶴久 | 刑事 |
| 斎藤工 | 和田耕治(和田医師) | 先駆的な医師 |
『This is I』あらすじ
物語の主人公は、周囲から“普通”を求められる環境のなかで生きる少年・ケンジ。
彼の心の中にはずっと、はっきりした願いがある——「聖子ちゃんみたいなアイドルになりたい」という夢だ。
でも、その夢は学校でも家庭でも、簡単に理解されない。
「男のくせに」「変わってる」「気持ち悪い」
そういう言葉が、本人の存在そのものを削っていく。暴力的ないじめだけじゃなく、笑いのノリ、からかい、空気の圧…“日常に溶けた偏見”がじわじわ効く描写が続く。
ケンジは、だんだんと「自分を出すこと=危険」だと学んでしまう。
そして、家でも学校でも居場所が薄くなっていくにつれ、彼の視線は“外”へ向かう。
そこで偶然(というより必然みたいに)辿り着くのが、夜の街にあるショーパブだ。
ショーパブは、ただ明るくて楽しい場所として描かれない。
そこにも厳しさはあるし、現実的なお金の話もあるし、傷を抱えた人間同士の距離感もある。
それでも、ケンジにとっては初めて「自分が自分のままで息ができる」空間に見える。
そこで出会う人たちの存在が、ケンジの背中を押していく。
誰かが“正解”を教えるのではなく、彼自身が少しずつ「こうありたい」を言葉にできるようになる。
この過程が、いわゆる成功譚というより、自己肯定の芽が育つ時間として丁寧に積み上がるのが本作の強み。
ただ、ここで終わらないのが『This is I』。
夢に近づけば近づくほど、現実の壁もはっきりしてくる。
- 家族との関係はどうするのか
- 自分の身体と心のズレをどう受け止めるのか
- 世間から向けられる視線と、どう折り合いをつけるのか
その中で登場するのが、ケンジの人生を大きく動かす医師との出会い。
医師は救世主みたいに都合よく現れる存在ではなく、ケンジに対して「選ぶために必要な現実」を提示する。
つまり、希望だけじゃなく、代償も、痛みも、覚悟も含めて——。
ケンジは、華やかな舞台に立つために、そして“アイ(I)”として生きるために、いくつもの決断を迫られていく。
その決断は「夢を叶える」だけの話じゃない。
本作が描くのは、もっと根っこの部分。
自分に対して「これが私だ」と言えるようになるまでの、長い長い道のりだ。
そして観終わったとき、タイトルの意味が変わる。
『This is I』の「I」は、ただの自己主張じゃなく、
周囲に削られて、迷って、それでも拾い集めた“自分”の証明に聞こえてくる。
感想|『This is I』、はるな愛さんの人生が想像以上で普通に感動した
正直、観る前は「実話ベースの感動系かな」くらいの気持ちでした。
でも『This is I』は、観終わったあとに残るものがけっこう重い。重いけど、嫌な重さじゃなくて、「人が生きる」ってこういうことか…っていう重さ。
しかもこれ、はるな愛さんの物語だと思うと、さらにくる。
私は自伝を読んでるわけじゃないんですけど、作品を通して「え、はるな愛さんって、こんな人生だったんだ…」って知って、普通に結構感動しました。
テレビで見るはるな愛さんって、明るくて、パワフルで、空気を一瞬で変えるじゃないですか。
だから勝手に「元気な人」「強い人」ってイメージで見てたんですけど、映画を観ると、その明るさって“最初から持ってたもの”じゃなくて、削られながらも拾い直してきたものなんだな…って感じるんですよね。
いじめ・偏見の描き方が、リアルでしんどい
この作品、いじめの描写がわりとキツいです。
殴る蹴るみたいな分かりやすい悪より、笑いのノリで潰してくる感じが多い。
「冗談やん」って空気で、本人だけが傷ついていくやつ。これ、地味にいちばん残酷。
観てるこっちも「やめたれや…」ってなるし、同時に「自分も無意識に加害側に回ってない?」ってちょっと怖くなる。
こういう“空気の暴力”をちゃんと描いてるから、単なる感動映画で終わらないんだと思います。
ショーパブは「救い」だけじゃなくて、人生の分岐点として効いてる
ショーパブのシーンも良かった。
ここ、キラキラした居場所としてだけ描かないのがリアルなんですよ。優しさはあるけど、甘い世界じゃない。現実もある。
でも、だからこそ、主人公がそこで少しずつ息を取り戻していくのが分かる。
「あ、ここで初めて“自分でいていい”って思えたんやな」って、こっちも一緒にホッとする。
医師の存在が“全肯定”じゃなく、現実と覚悟を突きつけてくる
個人的に刺さったのがここ。
よくある映画みたいに「君は君のままでいい!」で終わらせずに、ちゃんと現実の話をする。
希望もあるけど、痛みもあるし、選択には代償もある。
だからこそ、主人公の決断に「物語だから」じゃない説得力が出てると思いました。
観終わって残ったのは「成功」よりも“生き直し”
いわゆる成功物語って、ゴールに辿り着いた瞬間に感動するじゃないですか。
でも『This is I』は、ゴールよりも、その途中——
「自分で自分を否定しないで済む場所を見つける」までの過程がいちばん胸に残る。
だから観終わったあと、泣いたかって言われたら号泣っていうより、
胸の奥がじんわり熱いまま、しばらく黙ってしまう感じ。
タイトルの『This is I』が、ただの自己主張じゃなくて、
削られても削られても最後に残った“私”の宣言みたいに聞こえてきて、そこが強かったです。
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