映画『悪い夏』感想・あらすじ解説|善人が堕ちる“最悪の夏”とは?

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映画『悪い夏』レビュー

🎬 イントロダクション

2025年3月20日公開、染井為人の同名小説を原作に、城定秀夫監督 × 向井康介脚本 × 北村匠海主演という組み合わせで生まれた濃密なサスペンス・エンターテインメント。タイトルどおり“クズとワルしか出てこない”世界で、真面目に生きる市役所公務員が悪夢のような夏に巻き込まれ、闇に堕ちていく――その衝撃的な物語が幕を開ける。


作品情報

  • 公開日:2025年3月20日(日本)
  • 上映時間:114〜115分程度
  • ジャンル:サスペンス・ミステリー(PG‑12指定)
  • 原作:染井為人『悪い夏』(第37回横溝正史ミステリ大賞 優秀賞受賞)
  • 監督:城定秀夫(『ビリーバーズ』など)
  • 脚本:向井康介(『ある男』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞)
  • 配給:クロックワークス

キャスト紹介

役名俳優役柄
佐々木守北村匠海真面目な市役所の生活福祉課職員。気弱ゆえに犯罪へ巻き込まれる。
林野愛美河合優実育児放棄寸前のシングルマザー。色仕掛けで佐々木に近づく。
宮田有子伊藤万理華正義感の強い佐々木の同僚。事件への関与を促す。
高野洋司毎熊克哉職場の先輩。愛美に肉体関係を迫る。
莉華箭内夢菜裏社会の人物・金本の愛人で、物語の鍵を握る女。
山田吉男竹原ピストル金本の手下、ドラッグ売人。
古川佳澄木南晴夏息子と貧困の中で万引き癖を持つ母親。
金本龍也窪田正孝裏社会の首謀者で犯罪計画を立案。

🌀あらすじ

舞台は、とある地方都市の市役所。主人公・佐々木守(北村匠海)は、生活福祉課で働く若手職員。真面目で責任感はあるが、人付き合いが苦手で、人の顔色を伺ってばかりの“気の弱い公務員”だ。

ある日、同僚の宮田(伊藤万理華)から一つの相談を持ちかけられる。
「先輩の高野が、生活保護受給者の女性に“関係”を迫っているって…」

信じがたい話だった。だが、上司にも言えず、頼れる人もいない宮田の頼みに、佐々木はしぶしぶ動き出す。そして出会ったのが、シングルマザーの**林野愛美(河合優実)**だった。

部屋は荒れ果て、幼い子どもは泣きじゃくり、生活はすでに崩壊寸前。
「高野との関係?そんなの…ないです」
淡々とそう答える愛美。だが、彼女の目にはどこか嘘があり、悲しみがある。

この出会いが、佐々木の“普通だったはずの夏”を、どこまでも狂わせていく。

――愛美の裏には、裏社会の人間・金本(窪田正孝)とその愛人・莉華(箭内夢菜)、そしてドラッグ売人の山田(竹原ピストル)が関わっていた。彼らは金を稼ぐための“ある計画”を着々と進めていたのだ。

愛美に惹かれながらも、仕事と倫理の板挟みに揺れる佐々木。
そんな彼に、次第に“選択”を迫られる場面が増えていく――
・公務員としての倫理を貫くのか
・愛美を救うために手を汚すのか
・自分自身の人生を守るのか

さらに、生活保護受給者の佳澄(木南晴夏)という万引き常習者も物語に絡み、社会の歪みが複雑に交差していく。

そして、ある“事件”をきっかけに、佐々木は一線を超えてしまう。

自分がしていることは正義なのか、それとも共犯者なのか。
「善人では生きられない」――そんな言葉が頭をよぎる中、
この夏、佐々木がたどり着いた“答え”とは…。


✨引き込まれるポイント

  • 普通の青年が、善意のつもりで関わったことで一気に裏社会の闇に堕ちていくサスペンス性
  • 河合優実の“壊れそうで危うい”シングルマザー役が、観る者を魅了
  • 北村匠海が演じる「弱さを抱えた公務員」が、誰しもに通じる共感ポイント
  • クズとワルしか出てこない世界における、“真面目な人間の悲劇”というリアリティ

🎤私の感想

映画『悪い夏』。
観終わった後、胸の奥にズンと重たいものが残る――そんな作品でした。

何が一番刺さったかって、「真面目に生きることの脆さ」です。
北村匠海さん演じる佐々木守は、どこにでもいるような、いわば“凡人”です。
ズルくもなれない、強くもなれない、でも他人を見捨てることもできない。
彼の“弱さ”が、誰よりもリアルで、観ているうちに自分の中にもあるその部分を突かれているような気持ちになりました。

そして、河合優実さん演じる愛美との関係。
彼女が発する不安定な魅力に惹かれながらも、「この人は信じていいのか?」という不穏さが常につきまとう。
そのバランスが絶妙で、佐々木が惹かれていく過程は、まるで“地雷原を全力疾走する”ような危うさがありました。

裏社会の連中はどいつもこいつも濃すぎて、こっちはもう胃が痛い…笑
毎熊克哉さん、竹原ピストルさん、そして窪田正孝さんのヤクザ感。迫力ありすぎです。

…でも、それでも。
この映画、ラストのあのシーンでまさかの“落とし穴”を仕掛けてくるんですよ。

もうね、ドタバタです。完全にコントです。

佐々木が追い込まれすぎて、思わず「そっち行く!?」っていうあの展開。ドタバタ劇。

それまでシリアス全開だった空気が、一気に“シュール劇場”。
ただ、それが安っぽいギャグではなく、“悲劇が一周回って笑えてくる”という、ある種のブラックユーモアとして成立してるのがすごいところ。

佐々木にとっては人生最大のピンチ。
でも観てるこっちは、「うん…なんかもう、笑うしかないよね」と妙な納得感すらある。

最終的に感じたのは、
真面目な人間が壊れていく姿は、悲劇だけど、時に滑稽でもある。
その滑稽さに笑ってしまう自分もまた、どこかでこの歪んだ社会の一部なのかもしれない――そんな皮肉が込められているように思えました。

“悪い夏”は、単に「悪人の夏」ではなく、
「善人が生きづらい夏」であり、「正しさが報われない季節」だったのかもしれません。

シリアスなのに笑えてしまう。
笑ってしまった自分に少し罪悪感を抱く。
この映画、そんな不思議な余韻を残していきました。

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