『フォールアウト』シーズン2 第1話レビュー
イントロダクション
「世界が終わっても、人は“進歩”をやめない」——それが希望じゃなく、支配や搾取の形で現れるとしたら?
『フォールアウト2』第1話は、シーズン1の余韻(父ハンクの逃走/Vault-Tecの闇)を引きずったまま、物語を**“ニューベガス”行きのロードムービー**へギアチェンジしていきます。
そして開幕からぶちかましてくるのが、新登場の重要人物——ロバート・ハウス。
「文明を創る側の人間」が、どれだけ冷たく、気持ち悪く、魅力的になり得るか。シーズン2はそこに踏み込んできます。
作品情報
- 作品名:フォールアウト(Fallout)シーズン2
- 配信:Prime Video(Amazon)
- 話数:全8話(週1配信)
- 舞台の軸:荒野〜モハビ方面、ニューベガスへ
キャスト紹介
| 役名 / 呼称 | キャスト | キャラクター紹介 |
|---|---|---|
| ルーシー・マクリーン | エラ・パーネル | Vaultで“正しく生きること”を教えられて育った主人公。シーズン2では、父の裏切りと世界の残酷さを知ったことで、善意と現実の狭間でもがく姿がより鮮明に。優しさが武器にも弱点にもなる、フォールアウトの良心そのもの。 |
| グール(クーパー・ハワード) | ウォルトン・ゴギンズ | かつては人間、今は荒野を生き抜くグール。冷酷で皮肉屋だが、ただの悪党ではなく「生き残るための現実」を誰よりも理解している男。ルーシーの理想と正面衝突しながらも、物語に深みを与える存在。 |
| ハンク・マクリーン | カイル・マクラクラン | ルーシーの父であり、シーズン2の“不穏の核”。善良な父親の仮面の裏に、Vault-Tecと深く結びついた思想と行動原理を隠している。彼の目的が明らかになるほど、物語は家族ドラマから人類規模の話へ膨らんでいく。 |
| ノーム・マクリーン | モイセス・アリアス | Vaultに残ったルーシーの弟。小柄で一見頼りなさそうだが、観察力と違和感への嗅覚は鋭い。Vault内部から“歪んだ秩序”を見つめ続ける存在で、外の荒野とは別の恐怖を体現しているキャラ。 |
| ロバート・ハウス | ジャスティン・セロー | シーズン2から本格登場するキーパーソン。文明・技術・秩序を愛する合理主義者で、その思想は「人類を救う」という名目で自由意志を切り捨てる冷酷さを孕む。静かな語り口が逆に怖い、思想型ヴィラン。 |
あらすじ(ネタバレなし)
シーズン1のラストで露わになった“父の顔”。
ルーシーは、あの瞬間からもう「帰る場所」を失ったまま、荒野へ足を踏み出します。
乾いた風。錆びた看板。遠くで鳴る銃声。
目の前にあるのは、親切でも正義でもなく、ただの“生存競争”。
それでも彼女は追う。
父ハンクが隠していたもの、Vault-Tecの闇、そして自分の人生を根底からひっくり返した「真実」を。
一方、同じ荒野を別の温度で歩く男がいます。
グール(クーパー・ハワード)。
優しさを捨てることで生き残ってきた者の目で、ルーシーの甘さを見抜きながらも、なぜか彼女と同じ方向へ向かっていく。
そして第1話が怖いのは、銃撃や血の匂いだけじゃない。
「進歩」「発明」「秩序」みたいな、耳触りのいい言葉が、ここでは人を壊す道具として登場してくるところ。
ルーシーの旅は、父を追う物語に見せかけて、いつの間にか
**“自由意志は必要か?”**という、不気味な問いに踏み込んでいきます。
あらすじ(ネタバレあり)
※ここからネタバレです。
1)開幕から「文明の悪意」を見せつけてくる
始まりは過去パート。
そこで描かれるのは、ある男——ロバート・ハウスの存在感。
彼が語るのは、正義でも救済でもない。
淡々と、合理的に、にこりともせずに「文明とはこうあるべきだ」と語る。
そして提示される“技術”が、あまりに露骨で、あまりに冷たい。
銃や爆弾みたいに派手じゃないのに、もっと気持ち悪い。
なぜならそれは、身体を壊すんじゃなく、人の“意思”を壊す方向へ伸びているから。
ここで視聴者は一発で理解させられます。
シーズン2の敵は、モンスターでも単純な悪党でもなく、
**「正しい顔をした支配」**なんだと。
2)ルーシーの「善意」が、荒野では弱点になる
現代パート、ルーシーは追跡の糸口を掴もうと動くんだけど、荒野は容赦がない。
助けたい、信じたい、誤解を解きたい——その気持ちは立派なのに、ここではそれが**“交渉材料”として利用される**。
善意が通貨にされる世界。
だからこそ彼女の一歩一歩が怖い。
「その優しさ、次の瞬間に命取りになるぞ…」って、画面から砂埃と一緒に不穏さが入り込んでくる。
3)グールは“正解”を知っている。だから言葉が刺さる
そこに並走してくるのがグール。
この男、相変わらずエグいことも平気でやる。
でもただの冷血じゃなくて、彼の行動原理は一貫してる。
「助けたい? いいね。じゃあ、その代償を払えるのか?」
この世界で“優しい人”が死ぬ理由を、彼は説明じゃなく背中で見せてくる。
ルーシーの理想が輝いて見えるほど、グールの現実が陰になる。
このコントラストが第1話の推進力で、会話の隙間にまで緊張が走る。
4)父ハンクの影が「家族の話」をやめさせてくる
さらに不穏なのが、ハンクの動き。
ただ逃げているんじゃなく、何かへ向かっている。
彼の“目的”が示されるほど、ルーシーの追跡は家族ドラマじゃなくなる。
「父を取り戻す」じゃなく、
「父が持ち去ったものを止められるのか?」に変わっていく。
そして、ある場所で彼らが触れる“痕跡”が、開幕の技術と線で繋がる。
ここが一番ゾッとするポイントで、
あのVaultの中で守られていたはずの世界観が、外の荒野と同じくらい醜く、同じくらい冷たかったことが見えてくる。
5)第1話の本当の恐怖は「暴力」じゃなく「提案」
この回が上手いのは、暴力を“見せ場”にしながら、もっと怖いものを置いていくこと。
それが、**「平和のために自由を捨てよう」**という提案。
争いをなくす。秩序をつくる。みんなを幸せにする。
その言葉は甘いのに、やってることは
「選ぶ力を奪えば、揉めないよね?」という最悪の近道。
そしてルーシーは、その提案の前に立たされる側になる。
ここから先、彼女が“いい人”のまま進めるのか。
それとも荒野に合わせて、心の形が変わっていくのか。
第1話は、そこまでを一気に敷いて終わります。
ニューベガスへ向かう旅は観光じゃない。
思想と支配の中心へ、自分から歩いていく導線になってる。
次回以降、「誰が正しいか」より先に、「誰が人間でいられるか」が問われていきそうで、めちゃくちゃ楽しみです。
私の感想
正直、シーズン2の1話は「派手な事件」以上に、価値観のホラーで殴ってくる回でした。
ハウスの登場が象徴的で、“発明(Innovator)”って言葉、普通はキラキラしてるのに、この世界だと一番信用できない称号に見えるのが最高に皮肉。
ルーシーは相変わらず人間としてまっすぐで、だからこそ荒野がキツい。
でも、その「まっすぐさ」を守ろうとするほど、世界が「じゃあ死ね」って顔で迫ってくるのがフォールアウトの残酷さなんですよね。
一方のグールは、やってることは荒っぽいのに、彼なりに筋が通ってる。ルーシーの理想を笑わないけど、理想だけじゃ人が死ぬことも知ってる。2人の温度差が、会話のたびにヒリついて面白い。
あと、個人的にゾッとしたのが「争いをなくすために自由意志を消す」みたいな発想が、悪の妄想じゃなくて、“効率”として語られるところ。
文明って、便利さと引き換えに、じわじわと人間の幅(迷い・弱さ・優しさ)を削っていくじゃないですか。
この1話、そこに「便利だよ?じゃあ脳に挿すね」ってレベルで踏み込んでくる。笑えないのに笑ってしまう、最高にブラックな導入でした。
シーズン2、ニューベガスに行く=観光じゃなくて、“思想の戦場”に向かう感じがする。
この先、ルーシーが何を守って、何を捨てて、どんな顔つきになっていくのか……期待しかないです。
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