アマプラ『犯罪者』6話7話感想|真の犯罪者は、たぶん画面のこっち側にいる

7月31日の夜、第6話と最終話が一気に配信されました。

正直に言うと、私はその日のうちに観るつもりはなかったんです。うちの仕事は土日が本番なので、金曜の夜は早く寝るに越したことがない。でも第5話のラストで軽トラの荷台が映った瞬間から、頭の隅にずっと引っかかっていた。結局、風呂上がりに「1話だけ」と思って再生ボタンを押して、そのまま2話続けて観てしまいました。

観終わったあと、テレビを消してしばらく座ったままでした。

面白かった、とは言いにくい。でも、こんなに後味の悪い2時間を人に勧めたくなる作品も珍しい。

この記事はネタバレ全開です。第7話の結末まで書きます。未視聴の方はブラウザを閉じて、先にPrime Videoへ行ってください。ほんとうに、その方がいい。

目次

『犯罪者』6話7話のあらすじをざっくり整理

先に事実関係だけ整理しておきます。ここが頭に入っていないと、後半の考察がぼやけるので。

第6話は、2025年11月末から始まります。メルトフェイス症候群を発症した子どもを持つ山科早季子(MEGUMI)が、同じマンションの住人たちから抗議を受ける場面。「うつるんじゃないか」「子どもが怖がっている」。誰もが不安なのだ、という論理で、被害者の側が追い出されようとしている。

マンションの前にはカメラを持った人間が集まり、ネットには誹謗中傷が溢れる。それでも早季子は「メルトフェイス症候群全国連絡会」を立ち上げます。

一方その頃、修司(水上恒司)はついにタイタスフーズ営業部長・中迫武(ユースケ・サンタマリア)と再会を果たす。そこで真実の数々が明かされ、そして滝川(チョン・イル)がすぐそばまで迫っている――というのが6話。

**第7話(最終話)**は、通り魔事件の真相を知った相馬(高橋一生)・鑓水(斎藤工)・修司の3人が、それを白日の下に晒そうとする話です。鑓水のかつての同僚である東亜テレビのディレクター・小田嶋康介(青木崇高)に協力を仰ぎ、メディアの力を使って巨悪と対峙する。

そして真の「犯罪者」とは誰なのか、という問いに、この作品なりの答えが出される。

第6話が本当に描いていたのは、通り魔事件ではなかった

ここからが本題です。

私が第6話でいちばん堪えたのは、修司と中迫の再会シーンではありませんでした。マンションの廊下で、山科早季子が住人たちに囲まれるあの場面です。

住人たちは悪人として描かれていない。ここが恐ろしい。

彼らはただ怖がっているだけなんです。原因不明の奇病、顔の組織が壊死していくという症状、まだ何もわかっていない状況。自分の子どもを守りたいという、たぶん誰もが持っている感情。それが集まった結果、被害者の一家が加害者みたいに扱われる。

このドラマは第5話まで、「誰が殺したのか」を追いかける話でした。それが第6話で、いきなり別の問いに切り替わる。

「では、彼女たちを追い詰めているのは誰なのか」

バチルスf50を混入させたのはタイタスフーズです。隠蔽を指示したのは上層部です。でも、山科早季子の日常を壊しているのは、マンションの住人であり、カメラを持って集まってきた人間であり、匿名で言葉を投げつけている誰かです。

そして彼らは一人も逮捕されない。罪にすらならない。

第6話は、ミステリーの解決編に見せかけて、実は「犯罪者」というタイトルの意味を反転させる回だったと思っています。ここで一度、視聴者は容疑者の側に立たされる。

中迫武という中間管理職が、この作品でいちばんきつい

私は会社をやっている人間なので、どうしても中迫の側から観てしまいました。

彼は正しいことをしようとした人です。自社製品とメルトフェイス症候群の関連に気づき、上に報告し、そして「在庫と記録を破棄しろ」と命じられた。そこで彼は内部告発を選ぶ。

でも第6話で明かされるのは、その選択が招いた結果の大きさです。真崎(内野聖陽)は3億円を奪い、その過程で無関係の5人が目撃者になり、殺された。ホテルの従業員だった末沢と恋人の奈津まで死んだ。

中迫は「正しいことをした」のに、彼が動いたことで人が死んでいる。

このねじれが、この作品の中でいちばん現実的な部分だと思うんです。

組織の中で不正に気づいた人間が取れる選択肢は、実はそんなにない。黙る、辞める、告発する。この3つくらい。そして告発を選んだ瞬間、その人は組織の外に一人で放り出される。守ってくれる仕組みは、実務上ほとんど機能していない。

ユースケ・サンタマリアの芝居がまた良くて。彼、決して悲壮な顔をしないんですよね。どこか気の抜けた、しょぼくれたサラリーマンの顔のまま、とんでもない場所に立っている。あの温度差が怖い。

「悪人が悪いことをした」なら話は簡単です。でもこの作品が描いているのは、善良な人間が、手続きに従って、悪を完成させていく過程なんです。園田社長も森村専務も、たぶん自分を悪人だと思っていない。会社を守るという、彼らにとっては当たり前の判断をしただけ。

そこが、私にはいちばん刺さりました。

『犯罪者』最終回のネタバレ|生中継という最後の賭け

第7話。3人が選んだのは、司法ではなくメディアでした。

警察は動かない。動かせない。相馬はすでに警察内部で孤立していて、上に報告しても握り潰される。だから鑓水の元同僚である東亜テレビの小田嶋を頼り、生放送で滝川に殺人を自供させるという計画に出ます。

この「司法を諦めてメディアに賭ける」という選択自体が、もう痛烈な批評になっている。

そして計画は、半分しか成功しません。

滝川は捕らえられ、その様子は生中継され、通り魔事件の真犯人が誰だったのかは全国に知れ渡ります。メルトフェイス症候群の原因がタイタスフーズの製品であることも公表される。原因菌バチルスf50が検出され、関係者は逮捕される。

ここまでは勝利です。

でも滝川は、移送中に男に刺されて死ぬ。

「滝川」は偽名でした。素性は最後までわからない。誰が彼に依頼したのか――タイタスフーズの森村と、与党重鎮・磯辺満忠(伊東四朗)の秘書・服部あたりだろうと推測はされる。けれど滝川が死んだ以上、証明する手段がない。

黒幕は、誰も裁かれない。

これが『犯罪者』最終回の結末です。

「裁かれない悪」を最終回に置いた意味

普通のミステリーなら、ここで黒幕が逮捕されてカタルシスが来ます。伊東四朗演じる大物政治家が手錠をかけられて、視聴者はスッキリして寝る。

このドラマはそれをやらなかった。

原作の太田愛は『相棒』の脚本家でもあります。『相棒』にも、真相にたどり着きながら誰も逮捕できない回が定期的にある。あれは作劇上の逃げではなくて、たぶん確信犯なんですよね。

現実で起きた企業不祥事を思い返してみてください。

顔ぶれは違えど、パターンはいつも似ています。現場の担当者と、せいぜい中間管理職までが責任を取る。会社は謝罪会見を開いて、頭を下げて、しばらくしたら商品名を変えて再発売する。トップは体調不良で退任し、退職金は出る。そして政治家の名前は、最初から最後まで一度も表に出てこない。

『犯罪者』の結末が後味悪いのは、フィクションだからじゃない。現実の再現度が高すぎるからです。

第7話で提示される「真の犯罪者とは誰か」という問いに、この作品は名前で答えません。答えられない構造そのものが答えになっている。

罪は分散されていて、一人ひとりの負担は軽い。上層部は「そんな指示はしていない」と言い、担当者は「指示されたからやった」と言い、株主は「知らなかった」と言い、消費者は「怖いから」と言って被害者を排除する。

誰も自分を犯罪者だと思っていないのに、4人が刺し殺されている。

このドラマのタイトルが複数形でも単数形でもなく、ただ『犯罪者』という三文字であることの意味を、最終話を観終わってから考えています。

「生き延びた人間は生きなければならない」

原作小説のラストで、修司・相馬・鑓水の3人はこの言葉を胸に刻んで歩き出します。

最初に読んだときは、ずいぶん重い言葉を置いたなと思いました。でもドラマで6話7話を観たあとだと、意味が変わってくる。

これは前向きな決意表明じゃないんです。義務なんですよ。

修司は駅前広場でたまたま生き残った。4人が死んで、彼だけが助かった。その理由は、彼が立派だったからでも運が良かったからでもなく、単なる偶然です。そして生き残ったせいで、10日間追われ続けた。

彼が背負ったのは、生き延びたことへの責任です。何も知らずに死んでいった4人の代わりに、知ってしまった人間として生きなければならない。

これ、視聴者にもそのまま返ってくる言葉だと思っています。

この作品を最後まで観てしまった人間は、もう「知らなかった」と言えない。企業の隠蔽がどういう手順で進むのか、内部告発者がどうやって潰されるのか、世間が被害者をどう扱うのか。全部見せられてしまった。

だから後味が悪い。でも、その後味の悪さこそがこの作品の成果物なんだと思います。

演出と芝居について、少しだけ

考察ばかり書いてしまったので、作りの話も。

松永大司監督の演出は、終盤に入っても一切テンションを上げないんですよね。生中継のシーンですら、音楽で盛り上げない。川井憲次の劇伴は、ここぞという場面でむしろ引く。

高橋一生の相馬は、最後まで疲れた顔をしています。ヒーローの顔を一度もしない。斎藤工の鑓水は逆に、軽口を叩きながら誰よりも先に危険な場所に踏み込んでいく。水上恒司の修司は、10日間で明らかに顔つきが変わっていく。この3人の距離感が、最後まで馴れ合いにならなかったのが良かった。

友情の物語にしなかったこと。ここは監督と脚本(櫻井武晴)の判断が効いていると思います。

伊東四朗の磯辺は出番こそ多くありませんが、あの飄々とした佇まいが逆に効いている。悪辣さを演じないから怖い。伊武雅刀の園田社長も同様で、彼らは終始「普通の判断をしている人」として画面に映る。

評価

★★★★☆(4.5)

カタルシスを求めて観ると確実に裏切られます。でも、観たあと1週間くらい頭から離れない種類の作品でした。0.5引いたのは、第6話の情報量がやや多く、初見だと時系列の整理が追いつかない箇所があったから。ここは巻き戻して観返しました。

こういう人に刺さると思います

  • 会社勤めで、組織の理不尽を味わったことがある人
  • 現実の企業不祥事のニュースを、いつも他人事に思えない人
  • 『相棒』の「誰も逮捕できない回」が好きな人
  • スッキリしない結末に耐性がある人

逆に、勧めにくい人

  • 週末に爽快感がほしい人
  • 悪人が裁かれる話が観たい人

まとめ|『犯罪者』6話7話の感想

第6話で被害者を追い詰める世間を見せ、第7話で黒幕を逃がす。この2話は、視聴者に「あなたはどちら側ですか」と静かに聞いてくる回でした。

真の犯罪者は誰なのか。作品は名前を出しません。出さないことで、その問いを画面のこっち側に投げ返してくる。

私はその問いに、まだうまく答えられていません。だからこうして記事を書いているんだと思います。

全7話、Prime Videoで世界独占配信中。一気観できる長さですが、6話と7話は少し体力のある日に観ることをおすすめします。

原作の太田愛『犯罪者』(角川文庫)も上下巻で出ています。ドラマとの差分を確認する意味でも、読む価値はあります。相馬・鑓水・修司の3人はこのあと『幻夏』『天上の葦』へと続くので、続編の映像化も期待したいところ。

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