この本を手に取ったきっかけ
「ビジネス書グランプリ2026」の大賞を獲ったらしい。そう聞いてAmazonでポチった。
正直に言うと、商品ページを開いた瞬間は「またこの手の本か」と思った。「億」とか「富裕層」とかいう言葉が並ぶビジネス書って、だいたい中身が薄いイメージがある。でも、紹介文にある「ゴールドマン・サックス勤続17年」という経歴が妙に引っかかった。17年って、そこそこの覚悟がないと続かない。ちょっと読んでみるか、くらいの軽い気持ちだった。
結果的に、けっこう刺さった。
この記事では、ネタバレを抑えつつ読んだ感想をまとめていく。後半では内容に少し踏み込んだ感想も書いているので、まっさらな状態で読みたい方は前半だけ読んでもらえれば大丈夫です。
『億までの人 億からの人』ってどんな本?

著者の田中渓さんは、1982年生まれ。上智大学の理工学部を首席で卒業して、ゴールドマン・サックスに新卒入社。そこから17年間、マネージング・ディレクターとして投資部門の日本共同統括まで務めた人だ。
その17年間で、20カ国以上、300人を超える資産家たちと仕事をしてきたという。億単位はもちろん、兆単位の資産を持つ人たちや、産油国の王族とも。
そんな著者が「結局、億を稼ぐ人とそうでない人の違いはどこにあるのか」をまとめたのがこの本。全6章、80項目で構成されている。
ただ、ここが大事なポイントなんだけど、この本は投資術の本じゃない。「この銘柄を買え」とか「こういうポートフォリオを組め」みたいな話は出てこない。あくまで「富裕層のマインド」を掘り下げる本だ。
出版情報:
- 著者:田中渓
- 出版社:徳間書店
- 発売日:2024年11月27日
- ページ数:約280ページ
- 価格:1,650円(税込)/電子版 1,833円
ネタバレなしの感想
「地味」なのに刺さる。そこがいい
この本を一言で表すなら、「地味だけど、だからこそ信用できる本」だと思う。
よくある成功本のように「朝5時に起きて瞑想して冷水シャワーを浴びろ!」みたいな極端な話は出てこない。もちろん朝の時間の使い方には触れているんだけど、もっと静かなトーンで、「億を超える人たちが自然とやっていること」を淡々と並べていく。
その「淡々と」がいい。派手さがない分、「これなら自分にもできるかもしれない」と思わせてくれる。
自分も会社を17年やってきたんだけど、第5章の「生活習慣」の話を読んでいて、ドキッとした。毎月のルーティン業務に追われて、気がつくと「作業をこなす日々」になっている。忙しいのと、前に進んでいるのは違う。それをこの本に静かに言い当てられた気がした。
6つの章の中で特に面白かったところ
本書は以下の6つの章で構成されている。
- 第1章:年収1億円以上「富裕層の思考」
- 第2章:富裕層だけが知っている「お金の哲学」
- 第3章:お金がお金を生む「お金の使い方」
- 第4章:とんでもなく稼ぐ人の「時間の使い方」
- 第5章:普通の人でも実践できる「億稼ぐ人の生活習慣」
- 第6章:一生お金に困らない人の「人間関係の築き方」
個人的に一番グッときたのは第4章の「時間の使い方」だ。
著者自身、ゴールドマン・サックス時代に朝4時に起きて3時間の運動をこなしてから出社していたらしい。これだけ聞くと「極端な人」に聞こえるけど、本書を読むと、それが単なる根性論じゃなくて、「決断疲れ」を防ぐためのルーティン設計として合理的にやっていたことがわかる。
もうひとつ印象に残ったのは第6章の「人間関係の築き方」。富裕層は人間関係にも”分散投資”の考え方を持っているという話は、なるほどなと思った。
自分も小さい会社を17年やってきたけど、仕事って結局「時間の使い方」で差がつくなとつくづく思う。面倒なタスクを先にやるか、後回しにするか。たったそれだけのことなのに、5年単位で見ると結果がまるで違ってくる。この本の「決断疲れを防ぐルーティン」の話は、まさにそこに通じる。
こういう人に特に読んでほしい
- 会社経営や個人事業をやっていて、「今の延長線上でいいのか」とモヤモヤしている人
- FIREやセミリタイアに興味があるけど、具体的にどんなマインドが必要かわからない人
- 投資テクニックじゃなくて、「お金持ちの考え方の根っこ」を知りたい人
- 自己啓発本をたくさん読んできたけど、もう一段深い話が聞きたい人
逆に、具体的な投資手法やすぐに使えるテクニックを求めている人には、ちょっと物足りないかもしれない。この本はあくまで「マインドの本」なので。
気になった点も正直に
一方で、少し気になったところもある。
80項目もあるので、正直、読み進めていくうちに「億までの人、億からの人」という対比が何度も繰り返される感覚がある。中盤あたりで「はいはい、億からの人はこうするんでしょ」とちょっとお腹いっぱいになる瞬間があった。
あと、内容自体は他の自己啓発本でも言われていることと重なる部分がある。目新しさという意味では、正直、驚くような発見はそこまで多くない。ただ、ゴールドマン・サックスで17年間、本当に富裕層と仕事をしてきた人が「やっぱりそうだよね」と確認してくれる安心感は、他の本にはない。
結局、成功する人がやっていることって、そんなに奇抜なことじゃないんだなと。むしろその「当たり前のこと」を、どれだけ地味に続けられるかが分かれ道なんだろう。
評価
★★★★☆(4.0 / 5.0)
「特別なことは書いてない。でも、だからこそ信じられる」。そんな一冊。投資テクニック本を期待するとズレるけど、自分の思考や習慣を見直すきっかけとしては、かなり良い本だと思う。
⚠ ここからネタバレを含む感想です。未読の方はご注意ください。
ネタバレあり感想
「作業興奮」の話がリアルすぎた
本書で一番印象に残ったのは、「作業興奮」に関する話だ。やる気が出てから動くのではなく、動くからやる気が出る。これ自体はよく聞く話だけど、著者がゴールドマン・サックスの中で見てきた人たちの行動パターンとして語られると、説得力がまるで違う。
「億からの人」は、気分に左右されない。コンディションが悪い日でも、まずルーティンをこなす。そうするうちに体と脳がモードに入る。この感覚は、長く仕事を続けてきた人なら誰でもわかるはずだ。
これ、すごくわかる。自分も朝イチで一番めんどくさいタスクから片付けるようにしているんだけど、正直、パソコンを開く前は毎回だるい。でも、5分やり始めると不思議とエンジンがかかる。1件片付けると「もう1件やるか」となる。50歳を過ぎてから特に感じるのは、やる気を待っていたら一日が終わるということ。もう「やる気スイッチ」なんてものは存在しなくて、動いた結果としてやる気が湧いてくる。この本を読んで、自分がなんとなくやっていたことに名前がついた感じがした。
「学びへの投資」の本当の理由
もうひとつ深く考えさせられたのは、富裕層が学びにお金と時間を投資し続ける理由だ。著者によれば、それは単にスキルアップのためじゃない。「富裕層同士で刺激的な会話ができる自分でいるため」だという。
つまり、学びの目的は「知識を得ること」じゃなくて、「面白い人間であり続けること」。
これは正直、ハッとした。自分が本を読んだりセミナーに行ったりする理由を振り返ると、どうしても「すぐ仕事に活かせるかどうか」で選んでしまっていた。でも、富裕層の人たちは「自分という人間の厚みを増す」ことに投資している。この違いは大きい。
最近、AIツールを触り始めて、まさにこれを実感している。最初は「業務効率化に使えるかな」くらいの動機だったのに、いろいろ試しているうちに、AIのことを話せる人との会話がどんどん面白くなってきた。不動産業界にいると、AIの話ができる経営者ってまだ少ない。でも、だからこそ「あの人、なんか面白いことやってるな」と思ってもらえる。学びって、直接仕事に使えなくても、自分の「話のネタ」が増えるだけで人間関係が変わるんだなと。この本を読んで、その感覚にやっと言語化された気がする。
人間関係の”分散投資”という考え方
第6章で語られる人間関係の話も面白い。富裕層は、特定の人間関係に依存しない。ビジネスの人脈、プライベートの友人、異業種の知り合い、海外のネットワーク。これらをバランスよく持つことで、ひとつの関係が崩れても人生全体が揺らがないようにしている。
これって、投資のポートフォリオと同じ考え方だ。一極集中はリスクが高い。人間関係でもそれは同じだと。
長く同じ仕事をしていると、人間関係がどうしても「業界内」に偏りがちになる。取引先、同業者、昔からの付き合い。気がつくと、飲みに行く相手もいつも同じ顔ぶれだったりする。それが悪いわけじゃないけど、ひとつのコミュニティに依存すると、そこが揺らいだときにけっこうキツい。コロナのとき、まさにそれを感じた。この本で言う「人間関係の分散投資」って、けっこう本質をついていると思う。最近はSNSで異業種の人と繋がる機会も増えてきたし、そういう”ポートフォリオの組み替え”は、意識してやっていきたい。
まとめ
『億までの人 億からの人』は、一発逆転の裏技が書いてある本じゃない。むしろその逆で、「地道なことの積み重ねが、結局いちばん強い」という、ある意味で身も蓋もない真実を突きつけてくる本だ。
でも、その「身も蓋もなさ」に、なぜか勇気をもらえる。ビジネス書グランプリ2026の大賞は伊達じゃないなと思った。
気になった方は、ぜひ一度手に取ってみてほしい。Amazon、楽天ブックスなどで購入可能。Kindle版もあるので、通勤時間にサクッと読み始められる。
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