映画『渇水』レビュー
イントロダクション
『渇水』は、生田斗真主演の2023年公開のヒューマンドラマです。原作は河林満による小説で、1990年に文學界新人賞を受賞し、第103回芥川賞候補にもなった名作です。映画では、長引く干ばつによって水不足に直面する社会を舞台に、水道局員の主人公が人間関係や社会問題に直面しながらも、心の乾きを癒していく姿が描かれます。監督は高橋正弥、プロデューサーには『孤狼の血』シリーズで知られる白石和彌が初めて企画に参加しました。
キャスト
- 岩切俊作(生田斗真): 主人公の水道局員。給水制限のなかで市民との交流を通じて変化していく。
- 木田拓次(磯村勇斗): 岩切の同僚であり、停水処理を手伝う役割を担う。
- 岩切和美(尾野真千子): 岩切の妻であり、物語の中で夫婦間の疎遠な関係が描かれる。
- 小出有希(門脇麦): 停水対象家庭の一人で、人生の荒波に苦しむ姿が印象的。
あらすじ※ネタバレあり
映画『渇水』は、長期間の干ばつによって深刻な水不足に直面する地方都市を舞台に、給水制限が迫る中で人々の生活と心がどのように崩壊し、再生していくかを描いた物語です。水道局員である岩切俊作(生田斗真)は、水道料金の滞納者の家庭を訪れ、給水停止を実施する役割を担っています。
岩切の職務は、ただ水を止めるだけではなく、彼の心に重い負担をかけます。彼は水道を止めることで他人の生活に深刻な影響を与えることに葛藤を抱えながらも、その任務を遂行しなければなりません。物語の中心には、岩切が訪れる停水対象家庭である小出姉妹の物語が描かれます。姉の恵子(門脇麦)は、弟妹の面倒を見ながらなんとか日々を生き抜こうとしますが、生活は厳しくなる一方です。水道料金を滞納し、停水の危機に瀕している彼女たちは、社会の底辺で苦しむ家族の象徴として描かれています。
一方、岩切自身も家庭内で疎外感を抱いており、妻和美(尾野真千子)とはほとんど会話もなく、彼女は息子を連れて実家に帰ってしまっています。この状況の中、岩切は自分自身の心の渇きを感じつつ、仕事に追われる日々を送ります。
物語の中で、岩切は停水対象となった家庭の人々と深く関わるようになり、彼らの生活に触れることで次第に心を開いていきます。特に小出家の有希との交流を通じて、彼は自らが抱えていた心の渇きを再認識し、そこから再生への道を模索するようになります。
評価
『渇水』は、乾燥した心と生活の中で希望を見出すヒューマンドラマとして、多くの視聴者から高評価を得ています。社会的な問題を扱いながらも、人間関係の繊細さを見事に描き、キャストの演技が感動的と評価されています。また、プロデューサー白石和彌と監督高橋正弥のタッグによって、リアリティと感情の深みが増している点も称賛されています。
私の感想
映画を見た後に感じたのは、日常の中で見落としがちな「人とのつながり」の大切さです。水というライフラインをテーマにしつつ、その裏には私たちの心の乾きがありました。登場人物たちが水を求める姿は、私たちが日々求めている人間関係や希望そのものを映し出しているように感じます。特に、生田斗真さんが演じる岩切が直面する葛藤と、門脇麦さん演じる有希との対話は胸を打たれました。水不足という社会問題を背景にしつつも、最終的には「希望」を探す物語として心に残る作品でした。
『渇水』は、現代社会の問題を描きながらも、日常に潜む小さな希望や再生を探る深い作品で、ぜひ一度観てみることをお勧めします。
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